第9話 マスター 誘拐容疑

バイト帰り。明日は金曜日。

バイトも学校も両方あるが今からRe:LL(W)に行く。今日は開店日らしい。これは行かねば。

現在時刻20。

彼からの連絡はまだ入っていなかった。まだ会食中なのだろう。

何時頃開くかは知らないがとりあえRe:LL(W)に向かってみる。

しかし私はあまりにも衝撃的な現場を目撃してしまった。

それはRe:LL(W)の最寄り駅から歩いてる最中だった。

「あ、浮羽和さ、、、え」

あまりにも衝撃的すぎて言葉を失った。

私の目の前には。

2年ほど前にレジ袋が有料になり彼はSDGs推進派なのかエコバックを持っている。そこから覗かせているのは長ネギだ。

もちろんネギだけではない見た目だが私が視認できるのはネギ。と。

その右横にセーラー服を着た女の子がいる。

2人で並んで歩いている。

え、、、。

流石に誘拐ではないだろうが、というかそれ以前に誘拐にしては女の子が懐きすぎている。

会話の内容までは聞こえないが女の子が話して浮羽和が相槌を送っている。

どうゆうことだろうか…。

いや待て、永和。

思考を早まるな。

もしかしたら従兄弟、いや年の離れた妹、、。

そうだ。考えようは沢山ある。決して娘とかではないと信じている。

少しだけ近付いてみよう。

「桃ちゃ、今日の晩御飯は何がいい?」

「うーん、、ハンバーグ!!」

「ハンバーグねー、よぉし頑張っちゃうぞー」

うんうん、普通の会話。

至って普通の会話だ。

この会話のおかげで浮羽和の誘拐容疑は晴れた。

「そういえば保護者印が必要って言ってたプリントどこに置いてある?」

「冷蔵庫に貼っといた!!」

「え!僕見逃したかもしれない!」

「あれ…?テーブルの上だっけ…?分からない…」

保護者印ってなんですか!!!保護者印って!!!

血縁関係なんですか!え!!!!

お母さん!いや、え!

結婚なさっていたんですね!!!

いやそうですよね。だってかっこいいですし、スマートに紳士的な行動されますし。

何よりお声がいいんですから。

頭で何とか整理をする。

でも無理そうだ。

気付いたら体は動いていた。

「浮羽和さん!あ、えっと、そ、その子!!!浮羽和さんのむ、むむ、む、む、むむむむすめですか!!!!!!!」

突然声をかけられて驚きで目が点になっている浮羽和。

始めて見る人に怯えて浮羽和の後ろに隠れる女の子。

そして動揺を隠せない私。

いやなんだこの図。

そして状況を全て察して浮羽和は大笑いし始めた。

女の子を微かに笑っている。

「あっはははは!!!!とわちゃwwww面白いこというねwwwwww」

「え?」

どうやら私の予想はことごとく外れたらしい。

浮羽和はゆっくり説明してくれた。

女の子の名前は桃。

家出少女らしい。暗い夜道で震えながら死にかけていた桃を浮羽和が保護したらしい。

浮羽和が保護者代わりになって桃を育てているらしい。

「な、なんだーーー…………私てっきり娘さんかと、、、、」

2人は大爆笑してくれた。

本当に娘さんかと、なんなら結婚していることすら驚きだった。

でも結婚はしていないし娘でもないと分かってとっても安心だ。

いや安心って言う言葉は違うだろうがとにかく安心したからいいのだ。

胸を撫で下ろしてた時、浮羽和の後ろから可愛らしい少女桃がこちらをじっと見つめているのに気が付いた。

「えっと、桃ちゃん、、!さっきは変な勘違いしてごめんね!私は永和って言う浮羽和さんのお店に通っているお客さんの1人だよー!」

背丈は私より5cm低いかくらい…。セーラー服を着ているから中学生か高校生くらいだろう。

右手を軽くあげて手を振ってみる。

そしたら小さくだが振り返してくれた。

可愛い。

「ほら、桃ちゃん。永和さんに挨拶しなっ」

少しモジモジしながら浮羽和の後ろからしっかり顔を出し浮羽和の横に並ぶ。

「は、初めまして浮羽和さんにお世話になってる桃…で、す、ぅ、、、」

段々と声が小さくなって言ってしまったが上出来だろう。何はともわれ可愛いので許せる。

「うん!よく出来ました!よしよーしっ!」

浮羽和さんの頭撫でを獲得して満面の笑みを浮かべている桃を見てこちらも和んでしまった。

最初は敵対視していたが事情をちゃんと把握するともう可愛くて仕方がない。

「そういえば永和さんはもしかしRe:LL(W)に行こうとしてた感じ?」

「もちろんです」

あまりにもキリッとした凛々しい顔で答えてしまった。

「んじゃ、一緒に行こっか!永和さんご飯はもう済ませた?」

今夜の夕食はハンバーグですよね、もう存じ上げておりますよ。盗み聞きしてたとはとても言えないが。

「バイトが終わってそのまま来たのでまだですね」

「浮羽和さんのハンバーグ…美味しいです、よ?」

なんとまぁつぶらな純真な瞳でこの子は見つめてくるの…。

こんなのどんぶり3杯くらい食べてたとしても「食べていきます!!!」って言っちゃうよ…。

「永和さんうちくる?」

更には浮羽和からもお誘いを貰ってしまったら拒否なんて言う恐ろしい回答をした暁には全人類の4割程度には殺される。

「……ご迷惑で無ければぜ、ぜひ!!!」

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