第8話 なずなのカルボナーラ
あれから3日経った。
それで分かった事はRe:LL(W)は毎日店を開いている訳では無い。ごくたまに。1週間に1.2回開かれる。浮羽和が別の仕事で忙しいらしく店を開く時間が取れる夜中だけにごくたまに開店する貴重なお店だ。
通う客達は例え明日休みじゃなくても顔を出しに行くほどみんなRe:LL(W)という居場所が好きだった。
「あ、ながめんだぁ〜」
本日のなずなのメニューはカルボナーラ。毎日メニューを変えるなずなはかなりのグルメ家だ。
なずなの視線の先にいるのはみんなの人気者ながめんだ。
「とわさんちょっといいかい?」
私は食堂の看板メニュー、チーズ入りオムライスを食べている最中だった。
私のご飯タイムを邪魔してくるとはいい度胸じゃないか。これはどんな要件かによっては斬首ではないだろうか。
「今夜行くだろ?Re:LL(W)」
後ろでなずなの「キャーー」という声は聞かなかったことにする。
なずなにRe:LL(W)の事は話していない。
というか夢の事すら詳しく話していないのだ。なずなも無理に聞いてこようとしない。なずなの場を弁える空気の読める性格が大好きだ。
「もちろん行くよ」
またなずなの「キャーー」が聞こえた。
キャーーなんか生涯出したことの無い声のトーンだ。あんな可愛らしい声を出したい人生だった。
「今日教授同士の会食があって僕行くのが遅れそうなんだ」
彼が教授なのを時々忘れそうになる。というか忘れていたと言っても過言ではない。
いやというか、何故彼は私と一緒に行くのを大前提に話を進めているのだろう。
「わ、わかった。え、でもなんでそれを私に伝えるの?」
「えだって一緒に行くだろ?でも僕が一緒に行けそうにないから事前に伝えに来たんだが」
は、はぁ、、しか言えない。
素晴らしい勘違いをしているようだが訂正するのもめんどくさい。
「キャーー」がもはやBGMに聞こえてきた。
「分かった、みくりん達にも伝えとくよ」
これは斬首だな。
あまりにもどうでも良すぎる。
「行けなかったらまた連絡するよ」
「うん、わかっ」「は?」
教授に向かって「は?」と言うのを許されるのはこの大学くらいだろう。生徒と教師の距離が近いのはいい事なのか悪い事なのか。私には分からないが少なくともそれを咎める人はここにはいない。
「いやなんで私の連絡先を知ってんの」
「だぁって!とわさん!僕に電話してきたじゃん!!!!!」
あ、そういえばしたわ。すっかり忘れていた。
「そうだったわ」
「えぇ、、」
本当に忘れていた。てっきり彼が私のストーカーで極秘で私の連絡先を入手したのかと思った。
「全くとわさんは忘れっぽいなぁ、この様子だと僕が遅れることすら忘れてそうだね」
そんなニワトリみたいに短期記憶じゃない。流石に舐めすぎている。
「バカにしてるよね?」
「多少かな」
バカにしてますやん。
「まぁまぁ、とりあえず僕は今日遅れるからね」
よく分からない報告をくらった。
なずなもカルボナーラを食べきって「キャーー」と叫び疲れたのかスマホを触っている。
「あ、」
彼と喋るのに集中していたらオムライスのチーズが固まり始めていた。
斬首どころではない罪だ。
「ながめん、、絶対ゆるさない、、、」
「え、僕何かした、、?」
「ながめん、とわの食べ物の恨みは怖いよぉ〜」
そう言ってなずなはニコニコしながらこっちを楽しげに見てる。本当に彼女は笑うと更に可愛いなぁ。
いや、そうじゃなくて。
「とりあえず分かった、先行ってるよ、まぁ無理せずおいでね、ちなみに今度焼肉奢ってね」
彼は軽く「了解ー」と言いながらその場を去っていった。果たしてこの返事は私の焼肉の事なのだろうか、それとも遅れる件なのだろうか。
しまった、そのままデザートくらい奢らせとけばよかった。
なずなには話が一段落したら話すとしよう。
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