第6話 職業
「これは…」
様々な新聞記事の切り抜き、行方不明女性のリスト、同じ夢を見るという体験者の体験談をまとめたサイトのスクショ&URL。
新聞記事は蛍光ペンで重要部分に線が引かれている。その記事も様々ではあるが全て海に関する事と行方不明女性の記事だった。
彼は一体どこでこれを、そして最初はあれほど興味がなさそうにしていたのに…。
「どうしてこんなに調べあげたの?」
「とわさんの目だよ」
「え、……?」
彼はほくそ笑む。ふっ、と。
その仕草はなんとも言えない、和やかな雰囲気を纏っていた。
「とわさんの目が素敵だったんだ。普通なら馬鹿げた話さ、同じ夢を見ただけの僕ら。 確かに偶然が重なりすぎてはいるが偶然という言葉で片付ければいい事をとわさんは興味を示した。僕はその目に教師として興味が湧いたんだよ」
この男は急につらつらと恥ずかしげもなく色々語ってくれるもんだ。
私の目が素敵というが、今の彼の方が澄んでいる目の奥に生き生きとした炎か燃えたぎっている。
夏休みを楽しもうと、冒険に出かけようと、1歩大人になろうとする、あどけない少年のような目をしている。
「僕もあれから考えてみたんだ。これは調べる価値があるんじゃないかな、と。」
彼はニヤリと笑う。
「そして、教師として付き合ってあげるべきではないかな、と」
余裕のある笑みと口角を上げた笑みは私の心を武者震いさせるには充分すぎるものだった。
勿論私をバカにした物言いなのは確かだ。ただ私だけが興味を示していたと思っていた事が彼も興味を示し尚且つ協力をしてくれる。それだけで私は嬉しかった。
「ながめん、、、、」
「ところで時給いくら位の給料かな?」
うん、とりあえず彼の飲んでいるオシャレな色のカクテルを飲み干してやろうかな。
「まぁまぁそれは冗談として…」
彼は3人に目を向ける。
何故か3人は差があるもののドヤ顔をしている。特に眠人に関しては本当にドヤ顔しているかさえ分からない程だ。
「そして、あの3人が僕たちの協力者だ」
あまりの驚きで目を見張る。
「大人としてちゃんと名刺は出さないとだねフフ」
ノリノリで女性2人は財布から取り出す。
男性は「え、めんど、、」という顔をしながら渋々取り出してくれた。
「雨宮眠人、、、警視庁巡査…………ん!?!!!え?!?!!」
「みくり…しらす新聞社…え、記者さんなの?!!」
「こまださやか……人妻歯科クリニック、歯科衛生士…おん、、なんか想像つく、、」
「いやいやとわさん、そこじゃないそこじゃない」
彼は手のひらを思いっきり横に振りながら名刺の裏を見せてくる。
名刺の裏には手書きで何かが書かれていた。
「高校の頃、生物と人体、自然現象とか!得意でした!何か協力できるかもしれません」
せ、生物、、。自然現象…まぁ、、確かに…。
その場にいる全員が沈黙する。
浮羽和に関しては爆笑である。「せ、生物…その発想はないなぁ、、、!!!」
「だぁって!みんなでなんか楽しそうに話してたからなんだろって!!!そしたらみんな職種が必要となるお話してたし!!歯科衛生士いらないじゃん!歯見ろってか??」
彼女は一生懸命に私たちに抗議してくる。
要約すると彼女は私達の仲間になりたい。しかし自分が出せる技術的なものが今回の件に関して相性が悪い。
ということだ。
「さぁちゃんはここにいて元気を与えてくれるだけで僕達の心の支えになるから心配しなくても仲間外れなんかにしないよ」
浮羽和が優しく宥める。
まるで駄々を捏ねた赤子をあやすように。
「浮羽和さぁああああぁぁぁぁぁんんん!」
さやかはカウンター越しに浮羽和に抱きつこうとする。
「あ、マスターのお触りはお控えください」
とはにかみながらマスターは華麗に避ける。
「甘えさせてくれる訳じゃないんだ!!!!!!!」
「言葉で僕は甘やかすよ」
「くそぉぉぉぉおおおおお!!!!」
その時カウンターの下で微かに黄緑色の灯りが灯った。
カウンター下はマスターからしか見えない。しかしマスターは気付かなかった。というより見ていなかった。
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