第4話 再び

「ふぅ、、よし、出来た…!」

史上最高に美味しいシチューを無事作り終えた。沢山作ったので当分はシチュー三昧だし、なずなとかにもおすそ分けしよう。

そんなことを考えながら、お風呂にでも入ろうかと思った。やりたいことはまだまだあったが、シチューを作った満足感でソファに座っていただけのはずなのに、ついには眠ってしまった。


どこだろう。

辺りは暗い。

「カランッ」

なんだ、この金属同士がぶつかり合うような音は…。

恐る恐る手を回してみる。

「カラッシャランッ」

これは…鎖…?

「………っ!!」

少女だ。

「ねぇ!あなたは!誰!!!!」

「私に助けを求めたけど、なんで私なの?」

いくら声をかけても反応がない。

まるで聞こえていないかのようだ。

鎖でグルグルに巻き付けられている。

少女は静かに瞼を閉じ、身体が脱力して前のめりに崩れ落ちていた。その様子は、まるで強い感情に押し潰されたかのようだった。

少女の身体はその感情に従って、ぐったりとした姿勢をとり、全身から力を失っているようだった。

小さく息をしているのか泡が微かだが口から出ている。

ダメだ、どうすればいい。

私は今何をすれば…。

その途端視界は真っ暗になった。


「!!!!…っっっっ」

驚きと恐怖、そして疑念が一気に頭を埋めた。

首を思いっきり上げる。

意味がわからない…。

状況を整理しよう。

場所はこないだと一緒の深海だった。

辺りを見渡す余裕は無かったが私と少女しかいなかった気がする。

少女は全身を鎖で拘束されていた。

しかし、手から足先まで。そして胸元から腰周り。体全体に鎖が巻き付けられていた。あまりにも厳重すぎる。

いくら声をかけても返ってこなかった。

聞こえているのかさえ不明だ。

この現象は夢とカウントされるのだろうか。だとしたらこちら側の一方的な声は届かないのかもしれない。

そういえば鎖はどこから伸びていたんだろう…。

周囲を確認する余裕が無かった。

というか、今回は意識がしっかりあった。自分で体と口を動かすことが出来た。

一体どのような条件なんだ。夢は眠れば見れるという訳では無さそう。前回は彼と同時刻に眠っていたから…。

あ…!!!

スマホの連絡先を漁る。

流石に彼の連絡先は教授なので持ってないが大学の誰かが持ってるかもしれない。

手当り次第持ってそうな人に連絡する。

幸いにもなずなの先輩が彼の連絡先を持っていた。なずなの先輩→なずな→私の経由で彼の連絡先を獲得する。

慌てすぎて貰った瞬間即かけてしまった。

「プルルルプルルルル」

耳慣れたコール音が聞こえる。

緊張が自分の内側から湧き上がり、胃の奥まで広がる。

なかなか出ない。コール音が耳から脳に響く。

もう切ろうかと画面を耳から離した時。

「…ッ……はい、もしもし」

スマホから聞こえてくる声はいつもの通るような高い声ではなく、落ち着きがあり少し低めな声が聞こえる。

彼の声は私の焦った心を落ち着かせてくれた。

まるで悪夢から目覚めたように、ほっとした。

「な、ながめん、とわです、、」

「あー!とわさんか!いやさ知らない番号だったから一体誰だろうって思って。変な詐欺とかだったら嫌だなぁ、とか思って出るの迷ってたんだけどさ」

彼特有の一気に喋る癖。それが更に私を安心させる。

「今大丈夫?」

「うん大丈夫だよ!」

やはり私も焦りと驚きがあったのか主語、述語がごちゃごちゃの説明にはなってしまったがあった事を話した。

彼は私の気待ちを汲み取ったのか私が話終えるまで口を挟んでこなかった。小さく「うん」と聞こえる彼の声は大人らしい落ち着いた声音だ。

「なるほどね、状況は理解したよ」

「ちなみにだけど僕は夢なんか見てないよ今はBARに来てるんだ。少しお酒を飲んでてね」

彼は帰宅が早かったが今はBARにいるのか。だからなのか彼の周りからBGMが微かに聞こえる。

だけど私の仮説だと同時刻に夢見る事が条件だと思っていた。違う条件があるのだろうか。

「とわさん夢のこと気になるんだろう、僕なりに調べてみたから今からBARに来てくれない?場所はイリ駅のアム町3丁目だ。横にカラオケがあるとこだ。待ってるよ」

と彼は言って電話を切った。

本当にいきなりすぎる。そもそも私はシチューを食べるというは最重要任務があるのだ…。

「はぁーーーーー!!!」

「もーーーーーーー!!!!!!!!」

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