第3話 癒しの現れ
「お疲れ様でした」
バイトが終わり、帰り道では夜風が心地よく吹き抜ける。
ご飯はコンビニで適当に買った。
一人暮らしの女子大生などこんなもんだ。
家賃と生活費でほとんど消えていく。自炊でもすれば食費が抑えれるだろうがあまりにも時間が無さすぎる。
帰ったら3限の時の実習レポートを書かなければいけない。
電車に乗りスマホの通知を確認する。
なずなからLINEが数件来てた。
{ながめんと話したー?}
{何か分かった?}
{2人っきりの教授室何かあった?}
可愛い絵文字だらけのなずならしいLINEだ。
{特に収穫なし、なんもなかったよ}
帰りの時間帯とあって、電車は満員だった。現代社会において、誰もがスマートフォンを手に持ち、その画面を見つめている。
私も同類で今度は各SNSをチェックする。
芸能人とアナウンサーが電撃入籍という記事、動物園にパンダの赤ちゃんが産まれた、とある海の塩分濃度が上がっている、線路の中に落ちてたガラスの靴はシンデレラのものなのか?!!
最後の記事は意味がわからない。このようなものが広告事業では目を引くのだろう。
"勉強"としてその記事をチェックする。
別に釣りでもなんでもなく、本当にガラスの靴が線路内に落ちてたという記事だった。不思議な出来事があるものだ。
そのまま自宅に着き私は疲労によりすぐ寝てしまった。
例の夢から1週間経過した。あれから例の夢どころか夢という夢を見ていない。
実際は見ているが覚えていないだけかもしれないが。
全ての講義が終わり、大学の最寄り駅までの道のりだった。
日々は同じように過ぎていた。毎朝、大学に足を運び、バイトに勤しんで、夜には疲れ果てて自宅に帰り、そのまま眠りにつく。
ただの一人暮らし女子大生の平凡な一日だ。
今日はバイトがない。
久しぶりにスーパーで買い物をしてシチューでも作ろうかと考えていたらなずなが目の前を見知らぬ女子高生と2人で歩いている。
「なずな、誰?その女の子」
女の子は肩くらいの紺がかった黒色の綺麗なストレートヘア。
ジャケットを着ている事から高校生と推測できる。
ジャケットの前ボタンはかけず、スカートも控えめな短さだ。制服を少しだけ着崩す感じが控えめで可愛らしい子だった。
「あ、とわ!さっき怪我してて手当てしてあげたんだぁー!」
女子高生の右膝にはなずなが常時持ち歩いている可愛らしい絆創膏が貼ってあった。
女子高生は私に向かって「ぺこっ」と一礼する。彼女の礼儀正しさには感動した。
「どうもなずなの友達の永和です」
歳上らしく愛想良く挨拶する。
普通に可愛い子で緊張してる。私は男子高校か。
「友達じゃなくて親友でしょっ」というなずなの声は嬉しいけど今は喜ぶのを抑える。
「初めまして。雨季です」
名前すら可愛い、、思わず両手に拳を作り震わせてしまった。悶え死にそうだ。
「雨季ちゃん!よろしくね」
3人で駅までの道のりを歩く。
雨季の色々な事を教えてもらった。
話し方と雰囲気から自分のペースで物事を進めるマイペースな性格だと察せれた。
そんなことより可愛い。
私の頭は3分の2位が「雨季ちゃん可愛い」
だった。この思考は犯罪者予備軍になりかねない。
たがしかし、可愛い。
犯罪者予備軍思考を捨てさろうとモンモンとしていたら横から彼が登場した。
みんなの人気者蒼空眺君だ。私はそうは思ってないけど。
「なずなと、とわさん、と?この女子高生は2人の妹かなんか?」
いっその事妹が良かったと思うがなずなが真相を全て話す。妹設定にしとけばよかった。
「へぇー、どうも雨季ちゃん僕は彼女らの大学の教授の蒼空眺って言います。よろしくね」
大学教授がこんなお早い帰宅とは彼は今夜なにかの予定があるのかもしれない。
彼にも女がいるのか。なるほど。
今度これをネタに弄り倒すのもアリかもしれない。
色々と思考を巡らせていたら女子高生と彼は凄い打ち解けていた。
出遅れてしまった。今からでも会話に追いつこうとするが間に合わない。
これは抜け駆けだ。彼の腕の皮膚を引っ張り剥がすのを全力で抑える。
「あ、見て!あの3匹のカラス人の顔みたいじゃない?」
まるで無邪気な少年のような眼差しで夕日に重なる3匹のカラスを見ている眺くん。それより私も雨季と話したい。どいてくれ。
「それシミュラクラ現象ですね!」
彼女より歳上の3人はみな目を2倍ほどにかっぴらいた。
「「「え?」」」
あまりにも間抜けな声が出たものだ。
「え?違いますっけ?」
雨季も予想外の反応だったのか戸惑ってしまってる。
「シミュラクラ現象ってなになになになに?なずなそんな難しい言葉知らないよー?」
「僕も知らないなぁ」
「し、しみ、、なんだっけ、、」
スマホで検索をかけて画面を見せてくれた。
点などの物体等が三つ並んでると人の顔に見えてしまう錯覚現象のことをシミュラクラ現象というらしい。初耳だ。
今どきのJKは当たり前に知ってるのか、それとも彼女が詳しいのか。詳細は不明。
「へぇぇーー〜ーーー雨季ちゃんよく知ってるね。僕も君達よりは長く生きてるつもりだったけど初めて聞いたよ」
日常的に生きてる上での行動は自分達が知らないだけでちゃんと名称がある。
ゲシュタルト崩壊などはかなり認知度が上がったが、歳をとると時の流れが早く感じるのもジャネーの法則と言う名称がしっかりある。
雨季は物知りで、私たちはただ聞くだけで驚かされることばかりだった。
大学の最寄り駅に着いて私以外の3人は私とは別方向に乗る。私だけ違う方面の電車なのだ。
もっと雨季と話したかったが幸運にも連絡先はGETすることが出来たので我慢する。
雨季との出会いは疲れた私にとって癒しを与えてくれた。
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