第4話 おどおどな後輩彼女
「く、くくくくクラゲさんがこんなにたくさん……」
//怯えている
//SE:ぽちゃんと弱い水の音
「うぎゃああっ!」
//SE:身体にしがみつく音
「あ、あのコ、い、いま絶対わたしたちのこと威嚇しました!」
「ごめんなさいごめんなさいどうか命だけはご堪忍くださいぃ~」
//早口で
「……な、なに楽しそうに笑ってるんですか!」
「わたしがクラゲさんが苦手だって言った直後になにも言わずに水族館まで連れてきたのはせんぱいですよ!」
//まくし立てるように
//SE:腕に抱きつく音
「責任とってわたしを守ってくださいっ」
//SE:足音
「……もっと近くでクラゲさんが見たい?」
「ぜったいにぜったいに水槽から飛び出してこないんですか?」
「……なら大丈夫です。せんぱいの言葉、信じてますからね?」
「クラゲさんって、見た目はかわいいけどものすごく危険なんです。幼い頃に家族で海に行ったとき、パパがクラゲさんに刺されて緊急搬送されました」
「それ以降、わたしはクラゲさんにトラウマ意識を覚えているんです」
//SE:手を握る音
「だからせんぱい」
「クラゲさんのゾーンを抜けるまで手を握っていてもいいですか?」
「ドキドキでわたしの恐怖を上書きしてください」
「……ふふ、せんぱいはずっと手を握っていたいんですね」
//SE:近づく足音
「わたしも同じこと思ってましたよ」
//耳元で囁くように
「えへへ、はじめての水族館デートは楽しい思い出になりそうです」
//SE:ぴちゃんと強い水の音
「うぎゃああっ! クラゲさんが襲い掛かろうとしてますぅ~!」
………。
……。
…。
「ようやくクラゲさんゾーンを抜けました……」
//疲れた感じで
「けど、光に照らされたクラゲさんはとても綺麗でした」
「写真で見たことはありますけど、実物を見るのは今回がはじめてなので、ものすごくワクワクしました」
「ありがとうございます、せんぱい」
「せんぱいのおかげで、ひとつ新しい世界を知ることができました」
//微笑みながら
//SE:足音
「次は……サンゴ礁ですか」
「これがサンゴ礁……わっ、なにか出てきましたっ」
「あ、これが噂に聞くチンアナゴさん」
「えへへ、くねくねしててかわいいです」
//SE:ガラスに指先で触れる音
「こっちこっち、こっちおいで~」
「か、かっわいいぃ~!」
//無邪気に
「……わたしの方がかわいいって」
「チンアナゴさんと彼女を比較するのは彼氏としてどうなんでしょうかね?」
//剥れる
//SE:近づく足音
「けど、せんぱいのそんな不器用なところがわたしは好きですよ?」
//からかうように
//SE:ほっぺをつつく音
「つんつん、つんつん」
「えへへ、すぐに照れちゃうせんぱいのほうがチンアナゴさんよりかわいいです」
「……チンアナゴと彼氏を比較するのは彼女としてどうなんだって?」
「ふふ、どの口が言うんですか」
//おかしそうに微笑みながら
//SE:手を握る音
「じゃあせんぱい、次のエリアに移動しましょう」
………。
……。
…。
「わぁ~。ペンギンさんです~」
//SE:ペンギンが飛び込む音
「あ、飛び込みましたっ。わっ、はやっ。ペンギンさんってこんなに早く泳ぐんだ」
「……どうしたんですかせんぱい? そんなにわたしをじっと見つめて?」
「……ペンギンに興奮してる彼女がかわいすぎてペンギンに意識が向かない?」
「それはわたしのことを子どもっぽいってバカにしてるんですか?」
//剥れる
//SE:頭を撫でる音
「むぅ~。このタイミングでのなでなでは少し卑怯な気がします」
「せんぱい、わたしがなでなでされるのが好きなので、なんでもなでなでで許されると思っていませんか?」
「残念ですけどわたしはそんな単純な子では……」
「えへへ、くすぐったいですよ、せんぱい」
「こんな場所でイチャついて恥ずかしくないんですか?」
「……わたし?」
「わたしも恥ずかしいですけど、それよりも嬉しいキモチの方が勝っています」
「だからせんぱい、もっとなでなでしてください」
「そしたら、子ども扱いしたことを許してあげなくもないですよ?」
//甘えるように
//SE:頭を撫でる音
「えへへ~。せんぱいになでなでされるの好きぃ~」
//SE:ペンギンが飛び込む音
「あっ、見て見てせんぱいっ、またペンギンさんが飛び込みましたっ」
「わわっ、こっち来ますこっち来ますっ」
「うわぁ~。こんな近くでペンギンさんを見るのははじめてです……」
//感動したように
「でもこのペンギンさん、お魚を咥えたままどこに行くんでしょう?」
「……あっ、見て見てせんぱい、あそこにちっちゃいペンギンさんがいます」
「子ども、なのかな?」
「あ、もう一匹、お魚を咥えたペンギンさんが来ました」
「家族、なのかな?」
「ふふ、なんだか見ているだけでほっこりしてきますね」
「じ~~」
「……ん、顔になにかついてるのかって?」
「いいえ、せんぱいの顔にはなにもついていませんよ」
「ただせんぱいはステキなお父さんになりそうだなって、そう思っただけです」
//SE:手を握る音
「あそこにあるベンチで少し休みませんか?」
「えへへ、緊張しすぎて喉が渇いてきちゃいました」
//照れたように
………。
……。
…。
「すごい……このオレンジジュース、ほんとうに名前通りに光ってます」
「味のほうは……」
//SE:ストローでジュースを啜る音
「んっ! しゅわしゅわでおいしいですっ」
「せんぱいのほうはどうですか?」
「……ブルーハワイ以外の味がする?」
「少し飲ませていただけますか? わたしのも飲んでいいので」
//SE:カップの中の氷がぶつかり合う音
「では、いたただきますね」
//SE:ストローでジュースを啜る音
「……レモン、ですかね? そんな気がしましたけど……」
「あ、やっぱりブルーハワイとレモンみたいですよ。メニュー表の下のほうに書いてありました」
「はい、せんぱい。お返しします」
「……せっかくだから半分ずつ飲みたい?」
「ならそうしましょうか。わたしも……」
「ストローを使っていい?」
「はい、もちろん構いませんけど……」
「間接キスで恥ずかしい?」
「ふふ、相変わらずせんぱいの恋愛観は小学生のままですね」
//楽しげに
「安心してください」
//SE:ストローでジュースを啜る音
「わたしはせんぱいとの間接キス、全然イヤじゃないですよ?」
//SE:服がすれる音
「せんぱいはイヤなんですか?」
「わたしはストローに邪魔されてもどかしいです」
//耳元で囁くように
//SE:ベンチから立ち上がる音
「わ、わたし、あのペンギンソフトっていうのが気になるので買ってきますねっ」
//焦っている
「せ、せんぱいも要りますか?」
「……ひとつをふたりで食べたい?」
「~~っ!」
//悶える
「ひ、ひとりで食べたらおなか壊しちゃいそうですもんね! ふたりならそのことを懸念しなくて済みそうです!」
「……もうちょっと、なのかな」
//小声でぼそっと
「で、ではすぐに戻ってくるので、少しだけ待っていてくださいねっ」
「ん? ……水族館の次はプラネタリウムに行きたい?」
「わたしは構いませんけど、それは少しハードスケジュールなんじゃないですか? 水族館だけで充分な気がしますが……」
「ふふ、そんなしょんぼりした顔しないでください」
「明日から夏休みなので、来ようと思えばいつでもこの場所に来られますよ」
「プラネタリウムでも、水族館でも、動物園でも、映画館でも」
「せんぱいが行きたい場所になら、わたしは喜んでついていきますよ」
「だってわたしは、大好きなせんぱいと過ごす時間が大好きなんですから」
//満面の笑み
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