第3話 にゃんにゃんな子猫

//SE:ベッドが軋む音


「ご主人しゃまぁ~」


「今日は1日、あたしをかわいがってほしいにゃん?」


「っ~~!」

//悶える


「こ、これは過去一番に恥ずかしい台詞かもしれません……」


「……せんぱい、写真撮ってもらえませんか?」


「わたしに見惚れてくれていてすごくうれしいですけど、この体勢は死にたいくらいに恥ずかしいので……」


//SE:カメラのシャッター音


「ふぅ。これで今日の分はクリアですね」


「テストが終わるまで更新していませんでしたけど、みなさん、わたしのこと忘れていませんかね?」


「……はい。高校生だということは公表していないんです」


「今の時代、情報を軽はずみに扱うとイタイ目を見ますから」


「背景や瞳に映った景色、それらから所在地を特定されないように、常に気を配っているんですよ」


//SE:ベッドがすれる音


「だから、わたしのすべてを知っているのはせんぱいだけです」


「ご主人さまだけが、あたしをぜ~んぶ知ってるにゃん」

//耳元で囁くように(下一文も同じ)


「ご主人さまだけにしか、あたしのぜんぶを教えてあげないにゃん」


「……ふふ、せんぱいの照れ顔ひさしぶりに見ました。やっぱりかわいいです」


「今日は、ひさしぶりに自由に過ごせる週末ですね」


「テスト期間中は土日も関係なく勉強ばかりで……けど、せんぱいがずっと近くにいてくれたので楽しい思い出になりました」


「ありがとうございます。これからもいっしょにテスト勉強しましょうね?」


「と、勉強はいいんです勉強は」


「せんぱいはどこか行きたい場所はありますか?」


「まだ時間も早いので遠出することもできますけど……」


「このままわたしの部屋で過ごしたい?」


「この衣装のまま、さっきみたいにキャラを演じて甘えてきてほしい?」


「……わ、わかりました」


「では、今日は思いっきりせんぱいに甘える日にします」


「い、言い出しっぺはせんぱいなんですからね?」

//やや狼狽えて


「やめてって言われても、わたしが満足するまでやめないんですから」

//不敵に微笑みながら


………。


……。


…。


SE:部屋の扉が開く音


「おっまたせ~! ご主人さまのために、オムライス作ってきたにゃん♪」


SE:机に皿を置く音


「どう? おいしそうかにゃあ?」


「……えへへ、そう言ってもらえると頑張った甲斐があってうれしいにゃん♪」


//SE:服のすれる音


「じゃあじゃあ、早速食べるにゃ」


「……ん? そんな顔を赤くしてどうしたのかにゃ?」


「……くっつきすぎ?」


「ふふ、わかってにゃいなぁご主人さまは」


「猫さんは甘えたがり屋で、四六時中、ご主人さまに構ってもらいたい生きものなんですよ?」

//耳元で囁く


「はーい、ケチャップかけるにゃんよ~。それそれそれ~」


「うん、我ながら立派なハートが書けたにゃん」


「じゃあご主人さま、あたしのオムライスにケチャップかけてにゃん?」


「……はは、歪な形のハートだにゃあ~」


//SE:手が胸に触れる音


「けど、ここのハートはいつも綺麗だにゃ」


「……音、聞いてもいいにゃ?」


//SE:耳が胸に触れる音


「……ふふ、とくとく言っててかわいい。そんなに緊張してるんですか?」

//素に戻る


「でも、悪いのは言い出しっぺのせんぱいなんですからね?」


「甘えたがり屋の猫さんが満足するまでかわいがってください」


「……さぁ~て、冷める前にオムライス食べるにゃん」


「いただきま~す。はむぅ……ん~、おいしいにゃぁん!」


「さすがママの…………あ」

//やらかした風に


「い、いや違うんですよせんぱいっ」

//素に戻り、慌てた感じで


「チキンライスとオムライスはママが作りましたけど、わたしもしっかりご飯を炊いて、卵をかき混ぜて……し、下準備しっかりしました! なでなでしてください!」


「~~っ!」

//悶える


「そ、その優しい目やめてください!」


「わたしは本気だったんです! せんぱいのために一から全部オムライスを作ろうとしたけどうまくいかなくて……正確にはできたんですけど、その……見るに堪えないヒドイものができまして……」

//段々と声が小さくなる


「……それでもいいから食べたかった?」


「い、いやですよ失敗作をせんぱいに食べさせるなんてっ」


「せ、せんぱいには、わたしのいいところだけ見てもらいです……」

//顔を逸らしてつぶやく


//SE:頭を撫でる音


「あっ……」


「えへへ、はじめてせんぱいがなでなでしてくれました」


「……長所も短所も含めて全部好き?」


「ふふ、なんだかどこかで聞いた覚えのある胡散臭い台詞ですね」


「せんぱいはそれをどうやって証明してくれるんですか?」

//甘えるように


//SE:抱き締める音


「あっ……」


「ふふ、どうしたんですかせんぱい。1日ではじめてを更新しすぎですよ」


//SE:心音


「不思議です。耳を当てたときよりも鮮明にせんぱいの音が聞こえます」


「わたしの音も聞こえていますか?」


「……ふふ、せんぱいに負けないくらいどくどくしてます」


「わたしとせんぱいの鼓動がひとつに重なっていますね」

//しみじみと


「……せんぱい、これからもぎゅ~ってしてほしいです」

//甘えるように


「あ~んしたり、手をつないだり、ぎゅ~ってしたり」


「どれも恥ずかしいですけど、それ以上にせんぱいを感じられてうれしいんです」


//SE:服のすれる音


「わたしはもっとせんぱいを知りたいです」


「せんぱいにわたしのことをもっと知ってもらいたいです」


「だからせんぱい、わたしにもっと甘えてください」


「いつもわたしばかり甘えていて、ちょっぴり不公平です」


「それにせんぱいはわたしに興味がないのかなって、少し不安になってしまいます」


「大好きです、せんぱい」

//耳元で囁くように


「せんぱいはどうですか?」


「……ふふ、大大好きと来ましたか」


「ここでわたしが大大大好きと言い返したら、文句なしにバカップルですね」

//微笑みながら


「わたしはバカップルでも構いませんよ」


「せんぱいの側にいられるのなら、周囲がどう思っていようが気になりません」


「せんぱいが好きでいてくれるのなら、それだけでわたしは幸せなんです」

//満面の笑み


「大好きです、せんぱい」

//耳元で囁くように


「ふふ。何度言っても言い足りないくらいに、わたしはせんぱいのことが好きなんです」


「どうしようもないくらいに好きなんです」


「甘えたがり屋な子猫をこれからもかわいがってほしい……にゃん?」

//恥ずかしそうに


//SE:頭を撫でる音


「えへへ、せんぱいになでなでされるの好きです」


「と、まずは冷める前にオムライスを食べないとですね」


//SE:肩をとんとん叩く音


「ん? なんで……」


「ふふ、ではご厚意に甘えて」

//うれしそうに


「はむぅ」


「……うん、おいしいです」


「ではお返しに……」


「あ~ん」


「おいしいですか?」


「……ふふ、ならよかったです」


「お昼ご飯食べたらなにしましょうか」


「……手をつないでアニメ観賞ですか」


「ふふ、画面の向こうのキャラクターがわたしたちを見て妬いちゃいそうですね」


//SE:手が触れる音


「けど、いい案です」


「せんぱいと手をつなぎたいなって、わたしもずっと思っていました」


「わたしとしたいことがあったら、遠慮なくなんでも言ってくださいね?」


「それは、わたしがせんぱいとしたいと思っていることでもありますから」

//照れくさそうに微笑んで


「ん、んんっ……せんぱい」


//SE:服がすれる音


「今日は1日、わたしをかわいがってほしい……にゃん」

//恥ずかしそうに






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