第2話 あまあまな後輩彼女
//SE:合掌する音
「いただきます」
「はむぅ……ん~おいしいですぅ」
「学校の中庭で食べるお弁当って、なんだかものすごくおいしく感じますよね」
「はむぅ……日に日に濃くなる青空の香り、直に夏も本番ですね」
「せんぱいと出逢ったころは桜の雨が降り注いでましたけど、いまはすっかり、葉桜に生え変わっています」
「はむぅ……ところでせんぱい、期末テストは大丈夫そうですか?」
「はむぅ……前に言ってましたよね?」
「はむぅ……1年生の頃は数学がやばかったって」
「はむぅ……ん、そんな話をしたらお弁当がおいしくなくなっちゃうよって?」
「はむぅ……ふふ、心配いりませんよ」
「せんぱいとお話していると、わたしは幸せなキモチでおなかがいっぱいになって、お弁当を食べることなんて忘れちゃいますから」
//照れくさそうに
「ですが、そうやって話を逸らそうとするってことは、やっぱり雲行きが怪しいってことなんじゃないですか?」
「……なるほど。今回は数学に加えて生物と地学も危険ゾーンにあると」
「ふふ、せんぱいは根っからの文系男子ですね」
「わたしもどちらかと言えば文系科目が得意なので、親近感を覚えてしまいます」
「えへへ、わたしたちお揃いですね」
//恥ずかしそうに
「……わたしですか?」
「わたしは理系科目もまぁまぁって感じなので、赤点は回避できると思いますよ」
「……た、たぶん」
//自信なさげに
「……GW明けのテスト赤点だったじゃんって」
「た、たしかにあのときは数学で赤点を取りましたけど、あ、あれはちょっと調子がわるかっただけで……」
//言い訳っぽく
「……え、せんぱいも赤点だったんですか?」
//驚く
「でも、あのとき聞いたらギリギリセーフだったって……」
「……彼女の前でカッコつけたかった?」
「ふふ、そんなコトで嫌いになったりしませんのに」
「数学が得意でも嫌いでも、せんぱいが好きであることには変わりありません」
「長所も欠点も含めて、わたしはせんぱいのことが好きなんですから」
「……なんですか。そのわたしの言葉を疑ってそうな顔は」
//不満げに
「じゃあ、いまからわたしの言葉がほんとうだって証明します」
//強気に
「そこにあるランチバッグ移動してもらっていいですか? もっとせんぱいにくっつきたいので」
//SE:すりすりと、ゆっくり服がすれる音
「これでよしっと」
「えへへ、肩がぴったり重なっちゃってます」
「けど、これで終わりじゃありませんよ?」
「恥ずかしくても逃げないでくださいね? せんぱい」
//いたずらっぽく
//SE:箸でおかずをつまむ音
「……あ、あ~ん」
//イントネーションを外す
「……」
//ふたりとも固まったまま動かない
「……わ、わたしだって恥ずかしいんですっ。固まってないで早く食べてくださいっ!」
「あっ……」
//驚く
「えへへ。間接キス、しちゃいましたね?」
「ママの作る卵焼き、すごくおいしいんです。せんぱいもそう思いますよね?」
「……ふふ、気に入ってくれてみたいでうれしいです」
「では、もうひとつどうぞ」
「あ~ん」
「……自分で食べたい?」
「もぉ、どうしてそんな寂しいコト言うんですか。周囲の目が気になって恥ずかしいからですか?」
//SE:ずりずりと、やや激しく服がすれる音
「せんぱい、わたしだけを見てください」
//甘えるように(下の二文も同様)
「わたしもせんぱいだけを見て、恥ずかしいキモチを紛らわせていますから」
「せんぱい、お口開けてください」
「えへへ、せんぱいに2回もあ~んしちゃいました」
「……え、せんぱいもあ~んしてくれるんですか? 貰ってばかりじゃ悪い?」
「ふふ、せんぱいは律儀ですね。そんなところも好きですよ」
「では早速……」
「……」
//ふたりとも固まったまま動かない
「……あ、いや、ウインナーが嫌いってわけではないんです」
「その、頬張る顔をせんぱいに見られるのが恥ずかしいなって思ってしまって……」
//顔を逸らし段々と声が小さくなる
「っ! ちょっとせんぱいっ、段々近づけるのずるいですっ」
「……でも、せんぱいはこの恥ずかしさを乗り越えて、わたしの頼みを聞き入れてくれたんですもんね」
//小声で早口で
「……よ、よしっ」
「で、ではっ! い、いただきますせんぱいっ!」
「はむぅっ!」
//勢いよくかぶりつく
「……えへへ、緊張でほとんど味がしませんでした」
「恋人同士であ~んし合うのって、もっと簡単なことだと思っていました」
「けど、手をつなぐので精一杯のわたしたちには、まだハードルが高かったかもしれませんね」
//苦笑しながら
「……こ、これから練習して、少しずつ慣れていきましょう」
//恥ずかしながらもがんばってる風に
「わ、わたしは今日限りじゃなくてこれからも、せんぱいにあ~んしたり、あ~んしてもらったり……た、たまにでいいので、したい、してもらいたい……です」
//後半はほとんど聞こえない感じで
「……えへへ、せんぱいも同じキモチですか。ならよかったです」
「話は戻りますけど、せんぱいがよろしければ、これから放課後にいっしょにお勉強しませんか?」
「わたしって、ひとりでじっと勉強できないタイプなんです」
「30分くらいが集中力の限界で、そこからスマホいじったり、整頓したりしながら、だらだら勉強しちゃうことがほとんどで……」
「だからせんぱいに監視してもらいたいんです」
「目の前でせんぱいが勉強していれば、わたしも集中して勉強できると思うので」
「場所は……わたしの家か、せんぱいの家にしましょう」
「そのどちらかなら、ふたりきりの時間を過ごせますからね」
//うれしそうに
「……勉強せずにだらだら話して解散になりそう?」
「ふふ、そうなったらそうなったでいいんじゃないですか?」
「じゃあこうしましょう」
「タイマーをセットして、その時間は本気で勉強と向き合う。その後はお喋りする」
「そうやって区切りをつければ、これが終われば楽しみが待ってるっていうキモチが湧いて、勉強にも集中できそうじゃないですか?」
「……はい。じゃあこの案で決定ということで」
「えへへ、これから毎日せんぱいと過ごせる放課後が楽しみです」
「テスト期間中はお昼休みと帰りでしかせんぱいに会えないんじゃないかと思って、朝から憂鬱な気分だったんです」
「……理由がなくても毎日会いたい?」
「えへへ、そう言ってもらえるとものすごくうれしいです」
「わたしも、せんぱいと毎日理由がなくても会いたいですよ?」
//甘えるように(下一文も同じ)
「おはようからおやすみまでいっしょに過ごしたいです」
「そんなせんぱいとの未来を勝手に想像して、毎晩寝る前にニヤニヤしちゃうイタイ子なんです、わたしって」
//苦笑しながら
「そんなわたしですけど、せんぱいはこれからも好きでいてくれますか?」
//やや不安げな感じで
「……ふふ。聞かなくても返事はわかっていたんですけどね」
「せんぱいが顔を赤くしながらわたしのことを『好き』って言ってくれる姿が見たいので、ちょっとだけイジワルしちゃいました」
//微笑みながら
「これから2週間はコスプレをしていないありのままのわたしと過ごす放課後になりますけど、覚悟してくださいね?」
//SE:すりすりと、ゆっくり服がすれる音
「わたしは、せんぱいが大好きな甘えたがり屋の後輩なので」
//SE:吐息
「甘えたり、甘やかしたり、甘々な放課後をいっしょに過ごしましょうね?」
//耳元で囁くように
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