薄紫色の花②

 梓はぼそぼそと言った。


「今日、クラスの役員を選ぶくじをやったんだけど……当たっちゃって……」


 渉の手が止まった。

 丸くした目で梓をじっと見る。


「……はぁ? マジかよ」


 数秒経って、やっと言った。梓はこくりと頷く。


「い、嫌? 困る? それなら代えてもらって……」


「決まったものを取り消せるのか?」


 渉の言葉に梓は詰まってしまう。


「う、……ど、どうだろ」


 仮にも仕事を放り出すなんて責任感がないと思われるだろう。

 代えてほしいと言えば、代わってくれる女子はたくさんいるだろうけど、取り合いをやめたいから、くじをしたのだ。その意味がまるでなくなってしまう。


 ……代えてもらうのは、無理そうだった。


 梓のにごった言葉に、渉も同じように思ったようだ。

「決まっちまったなら仕方ないな」とため息をついた。


「まぁ、仕事は仕事だから。妹扱いはしないからな」


 そのあと言われた。

 確かに妹だからと特別扱いをしてはいけないだろう。

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