学園の日々④

 渉は王子様らしく、文武両道。スポーツもできる。

 部活はバスケ部で、ポジションはフォワード。まだ二年生なのに、試合にも毎回出ている。

 試合ではコートの中を華麗に駆け回ってドリブルして、そしてシュートする。

 ゴールへ向かってジャンプする様子は、ジャンプというより鳥が飛びたつようだ。

 初めて見たときは見惚れてしまったくらい。

 激しいスポーツなのに、バスケの動きがこんなに綺麗なのだということを梓は初めて知った。

 そんな渉は、きっと走るのだって速いに違いない。


 順番は少しずつ進んでいって、ついに渉がスタートラインに立った。


 よーい、スタート!


 そんな掛け声などは聞こえなかったけれど、見ているだけでわかった。

 渉はやはり、鳥が飛び立つように真っ先にスタートを飛び出した。

 まるでコースを滑るようだった。

 先頭を走り出した渉は、抜かれるどころか二番を走る生徒との差をぐんぐんつけていく。

 百メートルなのでそう距離はないというのに、ゴールに飛び込んだときには、周りに誰もいなかった。ほかの生徒がゴールインするのにたっぷり二秒はかかっただろう。

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