一緒の登校②

「準備できたか。行くぞ」


 渉から声がかかっても、「はぁい」と自然に返事ができる。そのまま、昨日しっかり支度をしておいた通学バッグを持って玄関へ。

 渉はすでに靴を履いて待っていてくれた。

 通学バッグと、ほかには部活に使うスポーツバッグも持っている。


「いってきまーす」


 家に残っているひとはいないけれど、一応きちんと挨拶をする。

 渉が鍵をかけた。その鍵は通学バッグの決まったポケットに入れられるのだ。


「お兄ちゃん、今日は部活?」


 スポーツバッグを見て、梓は質問した。庭を抜けて、門を出て、学校への道を歩きだしながら。

 この道を歩くのもずいぶん慣れてきた。


「ああ。ちょっと遅くなるから……夕飯は母さんが作るってさ」


「そうなんだ。……私も手伝うよ」


 夕飯はお母さんの担当らしい。でも任せっぱなしというのはためらわれる。

 前の家では毎食お母さんが作ってくれていて、梓が料理をするのはお母さんに用事があるとか、もしくは休みの日で時間があるとか、そういうときだけだったけれど。

 でも今ではあんな立派な朝ご飯を作ってくれるひとが一緒に暮らしているのだ。仮にも女の子である自分がただ、作ってもらって食べるだけなんて。


「それがいいな」


 渉はそれだけ言って、前を向いた。ポケットからスマホを出して、ちらっと見る。どうやら時間を見たようだ。

 あまり時間はないから、さっさと歩かないと。梓はそれを見て思って、ちょっと速足になる。

 なにしろ渉は年上なだけではなく、運動部なので足も速い。梓を置いていったりはしないけれど。

 学校はそれほど遠くない。十分程度だ。

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