一緒の登校③
「じゃ、また」
校門前で渉と別れる。
高等部と中等部では、過ごすエリアが違う。活動はかぶることも結構あるけれど、教室がある棟は別々だ。
「うん、頑張ってね」
梓は渉に言った。渉は「ああ」とだけ言って、ちょっと手をあげて高等部の昇降口のあるほうへ歩いていく。
その後ろ姿を見送って……梓はちょっと、目をまたたいてしまった。
一人になって歩いていく渉。その様子を見ているのは梓だけではなかった。
「小鳥遊くんよ!」
「今日はちょっと遅いのね」
言い合っているのは、同じ高等部の女子。嬉しそうだった。
渉にとって、先輩か後輩なのかはわからないけど、小鳥遊くん、と言っていたから同級生か先輩なのかもしれなかった。
そう、『お兄ちゃん』が歩くと大抵こうなるのだ。
渉は学園ですごく人気があった。今のように女子にきらきらした目を向けられるのはもちろん、男子の友達も多い。
社交的で明るくて、誰にも優しいので好かれる要素はたっぷりある。
こんな、学園でも人気の『王子様』がどうして自分と兄妹になってしまったのか。
梓はいまだに首をひねってしまうのだった。
カバンを持って、その様子を見守っているうちに、うしろからぽんと肩を叩かれた。
「おはよう梓ちゃん!」
振り返ると友達が立っていた。にこにこと朝から笑顔だ。
「おはよう」
梓も振り返って、にこっと笑った。せっかく会ったのだから一緒に教室へ行くことにする。
中等部の昇降口へ向かいながら、ちらっと渉の歩いていったほうを見る。
もう渉はさっさと歩いていってしまったらしく、姿は見えなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます