朝一番の「おはよう」を④

 小鳥遊たかなし わたる

 慶隼けいしゅん学園、高等部二年生。

 梓は中等部二年生なので、三才上だ。


 そして梓はまだ慶隼学園に入ったばかりなので、これを知ったのは最近だけど、このハイスペックな見た目と、あとは性格もいいので、彼は学園でもすごく人気がある、王子様のような存在だ。


 そんな彼がひょんなことから梓の『お兄ちゃん』になってしまったうえに、一緒に暮らすことになってしまったのだけど……いったいなにがどうしてこうなったか。

 だがそれよりも今は朝ご飯だ。


「はい。ふりかけ、なくなりかけてたから新しいの出した」


 王子様は、ふりかけの話なんかして梓にお茶碗を渡してくれた。

 ほかほかと炊けた白いご飯。食欲を刺激して、梓のお腹がいきなり、ぐぅっと鳴った。

 お腹の音なんて聞かれてしまって、一気に恥ずかしくなる。


 でも渉はなにも気にしなかったらしい。さっさと自分のぶんのお茶碗をテーブルに置いて、席についてしまった。

 なので梓も特になにも言うのはやめておいて、自分の席に着いた。渉の向かいの席。


「いただきます」


「い、いただきますっ」


 渉の挨拶に続いて、梓もいただきますを言った。お箸を手に取る。

 そうしてから気付いた。

 そうだ、ふりかけだった。

 テーブルのはしにあるケースに立ててあったふりかけを手に取った。

 新しいふりかけは、たまご味。海苔とゴマが入っている、お気に入り。

 封は切ってあった。でもまだちっとも減っている様子はない。

 梓が食べるだろうと思って、封を切っておいてくれたようだ。

 そう予想して梓はなんだか嬉しくなってしまった。

 すごく気の利くひとだ。このお兄ちゃんは。

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