朝一番の「おはよう」を②
次に聞こえた声に、完全に目は覚めた。むくっと起き上がる。
若い男の子の声だ。まだ慣れないもの。
ただ、このひとがここにいるのはおかしくない。
なぜなら、まだ二ヵ月弱しか経っていないけれど、立派な『家族』なのだから。
「お、起きてたよっ」
その声に答えた。心臓がどきどきしてくる。
男の子が同じ家にいるというのは慣れないのだ。お兄ちゃんや弟もいないし。
いや、いなかった、し。
というのが正しい。
「嘘つけ。アラーム鳴ってたくせに。……さっさと起きてこい。朝飯あるから」
それだけ返ってきて、ドアの外の気配が遠ざかっていくのをうっすらと感じた。
行ってしまったらしい。キッチンかダイニングかにだろう。
梓は、ちょっとほっとした。
でも起きられずにいたと見抜かれていたことに恥ずかしくなる。
もう一緒に暮らして二ヵ月なのだ。
朝に弱いこともとっくに知られているのだけど、でもなんだかだらしのない子のように思われないかどうか心配になってしまう。
いや、気にしなくていいのだろうか。
なにしろ家族なのだから。
それでも、格好をつけたい理由はある。
梓は布団を出て、ベッドからも降りた。
サイドボードに置いていた時計をちらっと見ると、時計は七時過ぎを指していた。
あまり時間に余裕はない。八時には出なくてはいけないのだから。
恥ずかしいし、朝からどきどきしてしまったけれど、とりあえず感謝しなくてはいけない。
ドアを叩いてくれた男の子に。
いや、男の子、という表現は正しくない。
……お兄ちゃんに、だ。
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