第39話 シルヴィクへの帰還
ヤマトの復興にとりかかり始めたコユキちゃんからの依頼も受けて、私とほむらさんも復興のお手伝いをして3日ほどが経ち、ヤマトの街並みはすっかりもとの景色を取り戻していました。
「いやぁ、獣人たちの体力はすごいですね」
「そうだな、島の内外から木材に石材をどんどん集めてきてあっというまに加工して家屋を建てて崩壊していた壁まで元通り。早すぎてあたしたちが手伝い意味なんてほとんどなかったよな」
「そんなことはないぞ! このヤマト城の天守を元通りに修復できたのは他でもないアトとほむらのおかげじゃ。獣人ではこの高所の建設には労力がかかるからの。ご苦労じゃった」
「そうね、アトとほむらがいないとわたし1人で重い石材抱えて天守工事しないといけなかったもの」
「いえいえ、多少なりお役に立てたのであれば何よりです」
修復されたヤマト城の最上階から城下を眺めながら私、ほむらさん、コユキちゃん、シキナミさんと談笑をしていたところですが、十分ヤマトの復興も終わり、私とほむらさんはそろそろシルヴィクに帰る予定です。
「そろそろ私たちはシルヴィクに帰ろうと思います」
「うん、遠い所ありがとうね。アトが来てくれていなかったら正直危なかったと思うから」
「気にしないでください。むしろコユキちゃんが呼んでくれたおかげで王都含めて色々と問題が起こっていたものの元凶をつぶすことができましたし」
「……そのことだけど、あの『異界門の札』?っていっていたやつはあの魔族が作ったものなの?」
ずっと気にしていたのか少し遠慮がちに例の札について聞いてきました。
「異界門の力を術式に落とし込むというのは正直私も驚きましたね。少し解析してみていましたがそう簡単に作れる代物ではなかったですが、あのレベルの魔法使い、魔族であれば情報を持っていれば作成できるでしょうね」
「異界門の情報ってこと?」
「そういうことです」
「ということはやっぱり異界門に関連している人物が糸を引いていたことになっちゃんじゃないの?」
コユキちゃんの言う通りで、あれほど高度な術式を組み込んだ物を作るにはその術式に精通していないといけません。至極妥当な推察です。
「私じゃないですよ?」
「そんなこと思ってないよ!」
「本当ですか? まあ仮に誰か知り合いがかかわっていたのだとしたら、私が見つけたときにどついておきます。任せてください」
少し冗談めかして話をそらしましたが、異界門に詳しい人物なんて数えるほどしかいません。本当にそんなことをしている人物がいるなら説教してやらないといけません。
「では、私たちはシルヴィクに戻ります。何かあればまた使いを寄こしてください。シキナミさんもいつでも遊びに来てくださいね」
「うむ、世話になったのじゃ! また遊びに行く!」
「じゃあまたね。ほむらさんもまた」
私とほむらさんはコユキちゃんとシキナミさん、そしてヤマトの住人たちの見送りを受けて、シルヴィクへの帰路に着きました。
◇
「ふと思ったんだが、アトが来た時と同じように転送の札で帰れなかったのか?」
「さっきの異界門の札の話と似たような話なんですよ。術式を物に組み込むというのは非常に難しいことでして、ほむらさんにお渡しした札は1枚しか持ってなかったんですよ」
「そんな貴重なものをさらっと渡したのか!?」
ヤマトからの帰路の船に揺られながら、ほむらさんと雑談をしながら、ヤマトからの帰路の船に振られていたところでシルヴィクまで辿りつきました。空路で行こうと話していたのですが、ほむらさんが海路が良いといったのでゆったりとした船旅となったわけです。
「さあシルヴィクに着きましたよ」
「アト局長! お帰りをお待ちしていました! ほむらさんもお帰りなさい!」
シルヴィクに着くなり出迎えてくれたのはユニちゃんでした。
「ユニちゃん! お迎えありがとう!」
「アト局長……お帰りのところさっそくで申し訳ないのですが、お時間ください。調査依頼いただいていた件について急ぎご報告と相談をさせてください」
「……承知しました」
「調査依頼の件ってなんだ?」
「家に着いてからほむらさんにもお話しますね」
私とほむらさんはユニちゃんのお迎えを受けてすぐに、一直線に私の家まで戻りました。
「それで調査いただいた結果はどうでしたか」
「はい、アト局長からご依頼いただいていた件、まず帝国側の状況についてですが、ツィル副局長から状況を伺いました。王都での事件収束以降事態は沈静化しているとのことです。ただし、その理由も判明していないので引き続き調査中です」
「そうですか、それで、もう一点お願いしていた件はいかがですか」
私は気になっていた後半の方の報告を促しましたが、ユニちゃんは中々言い出すかどうか逡巡しているようすです。
「では、私の方からヤマトで何があったかを先にお伝えしましょう。ヤマトにフルカスという魔族、この方がほむらさんをこの世界に連れてきた張本人ですが、個の魔族が大量の兵を引き連れて突然ヤマトに現れて戦闘になりました。それについては掃討して解決しましたが、彼らが持っていたのがこれです」
私はユニちゃんに、異界門の札を見せました。
「異界門の力を行使できる術式が封じられた札です。この札によって彼らは転移を使用できていたようです」
異界門の札の話をしたところ、ユニちゃんの目の奥が驚いていました。
「アト局長はすでに見当をつけられていたということですね」
私は無言でユニちゃんの言葉の続きを待ちました。
「アト局長から受けていたもう一つの調査依頼、王国、帝国の異界門の関係者、およ異界門管理局の局員の直近3ヶ月の行動調査の結果について報告します」
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