第31話 襲撃者

 ほむらさん、コユキちゃん、シキナミさんと一緒に城に戻り、コユキちゃん部屋へと向かいました。

 部屋に着くなりほむらさんは床に敷かれた布団の上にあおむけに寝っ転がりました。コユキちゃんは奥の座椅子に座り、シキナミさんはコユキちゃんの膝の上にちょこんと収まりました。

 

「じゃあほむらさんには少し休んでもらっている間にわたしはアトと昔のことでも語らおうかな」

「コユキちゃんと昔語りなんかしてたら夜が明けちゃいますよ。直近のお話を聞かせてもらえますか。主に行方不明者が吹ている件について」

「1年ぶりの親友との再会なのにつれなくてつらい」


 コユキちゃんは目元に着物の袖をもっていき、およおよと泣きまねをしていました。


「はいはいごめんなさい、ごめんなさい。早く教えてもらえますか」

「もう! わかったよ! 今回アトのことを呼びつけたのは2か月ぐらい前からヤマトの住人が減ってる件についてよ」

「減っているというのはその後もいなくなった人たちは見つかっていないのですか?」

「えぇ、ヤマトの島内にも捜索隊はたびたび出しているけど一切の痕跡なし。忽然と消えているし、かといって消えるところを見た人もいない」

「とても不自然ですね」

「本当にそう。それで王都でも似たような行方不明事件が起きていると聞いて何人か人を送って調べてもらってたんだけど手がかりもなし。そんなときにアトが動いたって聞いて、丸投……協力を仰ごうと思ったの」

「今丸投げって言いましたよね」

「気のせいね」


 にっこり笑って『何のことかしら』と首をかしげるコユキちゃんです。可愛いので許しましょう。


「それで、私は何をすれば良いのでしょうか?」

「これだけ人がいなくなってるということは、転移じゃないかと思ってるのよ。アトには転移の痕跡を調べて、その原因を特定して解決してほしいの」

「それはかまいませんが、この原因は今回の襲撃者と関係あるのでしょうか?」

「可能性はあるね。はじめは襲撃者が船に乗ってきた。人数は数十人と聞いていたけど蓋を開けてみると、あらびっくり。捉えた数は504人ですよ。どこから湧いて出たのかしら」

「転移してきたと言いたいわけですね」

「ご名答。乗り込んできた数十人か、その前に乗り込んできたいたやつがいたのか。転移術式を使える人物が準備したんじゃないかなって」

「前にも話したことありますが、転移を使えるのは私含め2人ですよ。テレポートの方が可能性あるのではないですか?」

「テレポートの射程は視認範囲まででしょ? それに……いるんでしょ、もう一人」

「……さすがに目が早いですね。どこから見ていたのやら」

「王都の事件に人を送ったっていったでしょ? だからその人物なんじゃないかなって」


 目ざとくて頭も切れるコユキちゃんが言うと説得力がありますね。


「でも私が調査するより、コユキちゃんたちが捕まえた人たちを尋問して吐かせた方が早くないでしょうか?」

「そうよね~わたしもそう思ってたんだけど」


 コユキちゃんは何やら思い出したくもないものを思いだしたような顔で顔をそらしました。


「あぁ……そういえば、コユキちゃんが確保してきていた縄につながれた人たち、全員もれなく死んでましたね。もしかして、捕まえた人の中に1人も生き残りがいないってことですか? コユキちゃん襲撃者だからってさすがにやりすぎじゃないですか?」

「ちがうよ! わたしたちがやっちゃったわけじゃないの! みんな捕まえた傍から自害しちゃったの!」

「自害? 全員がですか?」

「えぇ、どうにも全員暗示か催眠の類がかかっていたみたいで逃げられなくなったらすぐにしんじゃうのよ」

「じゃあその術をかを解いて捕まえればよかったのでは?」

「それができたら500人も殺す前にやってますぅ!」


 どうも複雑な術式で解除不可だったようです。ヤマトの術師衆がわからなかったとなると国内有数の呪術師による暗示のようですね。


「わかりました。手がかりはなさそうということですし、他でもないコユキちゃんの頼みなので調査はします」

「話が早くて助かる! じゃあお願いね」


 依頼を受けたところで、コユキちゃんの足元に居たシキナミさんがスヤスヤと寝息を立てているのが目に入りました。それを見てふと、ほむらさんの方にも目をやると、ほむらさんも珍しく無防備に眠っているのが見えました。


「お二人ともずいぶんお疲れだったみたいですね。シキナミさんはどちらかというと泣きつかれたという感じですかね」

「そうね、わたしはシキナミを部屋の布団に届けてくるね」


 そういうとコユキちゃんは、シキナミさんをゆっくり抱きかかえて立ち上がりました。


「アトも隣の部屋に布団用意しているからそっち使ってね。今日はひとまず休んでもらって明日からお願いね。それとほむらさんも隣の部屋に布団があるから一緒に連れて行ってもらえるとたすかる」

「りょうかいで―」


 私がほむらさんを抱えて運ぼうとしたとき、心の奥がざわつき本能的に危険を感じるような大きな警報が鳴り響きました。


「!! コユキちゃん、この音は!?」

「……襲撃者です」

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