第12話 王都王城

王都に入ったところで何やらがやがやとしているのが見て取れました。


「さすがの王都、中央都市と言った感じだな、ずいぶんにぎやかだ」


 ほむらさんは都会だから賑やかだと素直に受け取っているようですが、どうやらそれだけではなさそうです。


「騒がしいので、もう少し静かなところを周りましょうか?」

「そうだな、だがアトの言っていた料理屋はこの通りじゃないのか?」


 ほむらさんを連れて裏通りに入ろうとしていたところで、ざわついていた人込みの中から王都の兵士とみられる方々が十数人ほどこちらに向かってきました。


「失礼、お待ちいただきたい」


 兵士たちの中央にいた銀色の鎧をまといサファイアのような美しい瞳をした銀髪の女性が声をかけてきました。


「異界門管理局のアト様ですね、私は王国軍第一部隊『聖銀』の部隊長、シルビア・リンシュタインと申します。国王陛下がお待ちです。王城までご案内しますので馬車にお乗りください」


 中央にいた銀髪の彼女が名乗り告げてきました。国王が差し向けた案内人のようです。


「……確かに私がアトで間違いはありません。ただ、すみませんが今からお昼ごはんに行くので王城へは後でお伺いしま…」

「馬車にお乗りください。国王陛下がお待ちです。昼食もこちらで準備いたします」


 問答無用です。無慈悲です。


「わかりました……ただしお昼ご飯は美味しいものを準備してくださいね!!」


 私は料理屋への寄り道をあきらめて、半ば内心キレながらシルビアさんが示す馬車に乗り込みました。



 馬車で10分ほど揺られ王城に着くと、着くなり早々に国王陛下への謁見の間に通されました。


「少しぐらいゆっくりさせてもらいたいものですね」

「まったくだな、先に昼ご飯を食べたかったな」


 私はほむらさんと愚痴をこぼしながら謁見の間のある扉の前まで歩きました。


「異界門管理局局長アト様および付き人のほむら様が謁見に参りました」


 大きな扉の前で兵士の方が、これまた大きな声で言っています。


「入れ」


 室内から男声の低い声が聞こえると扉が開放され、謁見の間への道が開きました。部屋の奥には白いひげをたくわえた国王陛下が見えました。国王陛下の横には宰相のダイナスさんもいます。

 ダイナスさんとちらっと目線を交わして、私とほむらさんは陛下の眼前まで進み片膝をついて顔を下げました。


「異界門管理局局長アト、招集に応じ参上いたしました。隣に控えるは付き人のほむらとなります」

「ほむらと申します」

「楽にしてくれてかまわない」


 国王陛下に促され顔を上げました。


「遠路はるばるすまないなアトおよび付き人のほむらよ」

「とんでもございません」


 国王陛下が労いの言葉を発したので続けて返しました。


「それで今回遠路はるばるやってきてもらった理由は調査室のユニから聞いていると思ってよいか?」

「はい、ユニちゃんからは王国内で発生している迷い子の増加、転移に係る事故・事件の増加に関して陛下が説明を聞きたいとのことで今回の招集に至ったと聞いています」

「あぁ、その通りだ。ダイナス宰相、アトに詳細な事情の説明を」

「承知いたしました国王陛下。お久しぶりになりますアト殿」

「お久しぶりですねダイナスさん。お元気そうで何よりです」


 ダイナスさんは国王陛下の右腕と言われている国のNo2、宰相閣下です。世界屈指の魔法使いとして名声を轟かせている実力者でもあります。


「おかげさまで元気にはやらせていただいています。では、私の方から一連の状況についてご説明します」


 そういうと陛下の隣に立っていたダイナスさんがこれまで判明している状況について事細かに説明してくれました。


「ここまでがこれまでに判明している王都内の行方不明者になります」

「改めて聞くと確かにかなりの数ですね」

「数もそうですが……ユニさんに行方不明者が最後に見かけられた周辺の調査をしていただいたところ、多数の場所で界振の痕跡が見つかっていると聞いています」


 事前にユニちゃんに聞いていた話ではありますが、王都の中での界振というのは非常に珍しいです。それもこれだけの数となると偶発的なものではなく何か原因があるはずです。


「そうですね、ユニちゃんの調査なら間違いはないでしょうが、私も直接確認しにいきたいと思います。その調査場所の地図をいただけますか?」

「わかりました、準備して後ほどお渡ししましょう。部屋に届けさせます」

「アト、手間をかけるが事態の解決に向けて対応を頼む」


 ダイナスさんに調査場所の地図の手配をお願いし、国王陛下から改めて依頼を受け、私とほむらさんは謁見の間を後にして客室に戻りました。


「とても疲れました……」

「これ美味いなぁ!」


 私が疲れて客室のベッドに突っ伏している横でほむらさんは大変美味しそうな食事をとっていました。さきほどのシルビアさんか、ダイナスさんかわからないですが私たちを強制連行したことに配慮いただいたようでかなり豪華な食事を準備してくれて、ほむらさんがそれに舌鼓をうっていました。


「私の分も残しておいてくださいね~」


 謁見対応で疲れてすぐに食事をする気はあまりおきないので後で食べることにしましょう。


「美味い! これも美味しい! すごいぞアト!」

「……やっぱり私も先に食べます」


 少し休んでからと思っていましたがこのままでは全部ほむらさんに食べられそうなので起き上がってほむらさんと一緒に食事をすることにしました。

 食事が終わったら少し休んでからダイナス宰相に用意してもらった地図の場所に行ってみましょう。

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