第21話 報告
地下通路から脱出用のスクロールを使用して、ギルドに戻ってきた私とほむらさんは、『ダンジョン内に隠れていた不審人物たちと遭遇し戦闘。勝利したものの外部からの介入で不審人物たちはその場で死亡』という事実をギルドマスターに伝えました。
「それは大変だったなアトさん……しかしまさかこのダンジョン内にそんなやつらが……ダンジョンの存在をなぜ知ってたのか、それにどこからどうやって入ったんだ?」
「ダンジョンを知っていた理由も侵入方法も不明ですね。事前に聞いていた通りダンジョン内ではテレポート系の魔法も使えませんでしたし」
「そうか……結局何者だったんだ? そのアークと名乗った人物は?」
「あたしも戦ったが相当に強かったぞ? 主に使役しているモンスターだけだが」
ほむらさんも実際に対峙した感想を語りました。
「おそらくアークさんが率いていた集団は人身売買、奴隷売買の業者ではないかと思います。それほどの手練れでもなかったですし。ただ、ほむらさんが言うように使役していたモンスターは異常に高ランクのものばかりでした。実力と見合っていない歪な主従契約のように見えたので裏にいるであろう人物が提供していたのではないかと思います」
「そういうことか……王都にいた小悪党共を使って、人を攫い何かに利用しようとしていたっていう推測だな」
「証言させる人たちは軒並み消されてしまったので根拠はないですけどね」
ギルドマスターの言う通りどうやって彼らがダンジョンの存在を知ったのか、今回の首謀者が何者なのかなどなど気になる点が山積しています。
「ギルマスのいうように気になる点は多数ありますが、まずは引き続き警戒を強化しておくのが重要かと思います。私は王城に行き陛下とダイナス宰相にこのことを報告してきます。ギルドマスターも引き続き王命の通り冒険者たちに警戒を促してください」
「了解した、こちらは任せておけ」
「では、王城に行きましょうかほむらさん」
そうして私とほむらさんはギルドを出て足早に王城へ向かいました。
◇
「以上が、今回の行方不明者多発事件に関しての異界門管理局の調査結果と見解になります」
「お疲れさまでしたアト殿」
「うむご苦労であったアト」
私は一連の報告をしたのちに、国王陛下と教皇そしてギルマスが受け継いでいる王都地下通路の話について確認することにしました。
「まず陛下にお伺いしたいのですが、さきほどお話したギルド地下の話はもちろんご存じですよね?」
「……あぁ」
「あの地下通路、目的としては要人の王都脱出用と考えてよいでしょうか?」
「アトの推測の通りだ」
「他に地下の存在を知っている人物に心あたりはありませんか?」
「今回その悪党共が潜り込んでいたということで探っているのだと思うが、その通路の存在を知っているのは吾輩と原子教皇、ギルドマスター、後はそれぞれの腹心までは把握しているだろう。もちろん、今いるダイナス宰相も知っていたことだ」
国王陛下がそういうとダイナス宰相もうなずいていました。
「そうするとその中に怪しい人物がいることになりますが……」
「アト殿、確かにそういうことにはなりますが、地下通路についての情報は3世代に渡って伝わってきたものです。その過程で誰かに漏れていても不思議はないでしょう」
「それはおっしゃる通りです。なので今どうこうという話ではなく、少し国として調査を継続いただければと思います」
国王陛下や自身の無実を訴えるようにダイナス宰相が私へ弁明をしてきたので、引き続き調査をしてほしいというお願いしました。
「その点はもちろんです。報告を聞いた限り王都の転移事件についてはいったん落ち着きそうではありますが黒幕と思われる人物、組織は残ったまま。目的が分からない以上警戒すべきでしょう」
「アト殿とダイナス宰相の言う通りだな、ただちに聖銀部隊には王城の守護を、衛兵隊にはギルドと連携して王都の警戒に当たらせよ。ダイナス宰相には地下通路の件の調査を頼む」
「承知いたしました。合わせて各地にも警戒を促すように伝令を走らせます」
国王陛下とダイナス宰相の話合いで当面の方針は決まったようなので王都に関してはお任せすることにしましょう。
「そうでした、アト殿に展開いただいている転移制限、テレポート制限についてはどうしましょう」
「さすがにテレポート制限をずっとかけておくわけにはいかないと思うので解除します。転移制限は表向き影響はないので引き続き王都内に展開しておきます」
「ありがとうございます、アト殿」
「私たちは明日にも王都を離れ一度シルヴィクに戻ります。こちらでも各地情報集めて引き続き調査は継続するので進捗は随時報告いたします。王国側の調査でも何かあれば連絡をください」
「わかりました、シルヴィクに戻られたらユニ室長には王都へ帰還するようにお伝えいただけますか」
「はい、ユニちゃんには話をしておきます」
そうして私とほむらさんは国王陛下とダイナス宰相への報告を終えて王城の客室に戻り、明日シルヴィクへ帰るために帰り支度を進めておくことにしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます