SCENE-004 お客さん


 八坂の里の上空を我が物顔で飛んできた金龍は、ある程度のところまで八坂神社に近付くと、三の鳥居――参道の始点はじまりに立っている、最も外側の鳥居――めがけて高度を下げる。


(人が乗ってる)

 伊月は遠目にも、金龍の背にまたがる乗り手の姿を捉えることができた。

(あれが襲の言ってたお客さん・・・・で、金龍を使役してる魅縛士みばくし?)


 ふんわりと着地した金龍の背中から、三つ揃いのスーツを隙なく着こなした壮年の男が三の鳥居の前へと降り立つ。

 背中に乗せていたお荷物・・・を降ろし、身軽になった金龍は全長三十メートルはくだらないその体躯をみるみる縮ませ、最終的に、その姿を妙齢の女のものへと変化させた。




 龍に限らず、災害級ハザード・クラスのメトセラともなれば、人外ひとでなしとしての本性から徒人ひとに化けた姿は生まれながらの徒人と遜色がない。


 その美しさに作為を感じるのは、女の本性を知っている伊月の偏見に過ぎなかった。



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