第33話 ドロテアとの密談(レナード視点)
「それで、改めまして殿下に相談よ。私たちってこのままいったら、婚約させられそうじゃない?いい迷惑よね。こっちの気持ちなんか考えずに周りが好き勝手言ってて。」
「まぁ、そうだな……。俺たちの意見なんて無視されるだろうね。」
ドロテアが遠ざけたアイリスとルカスが部屋に戻ってくる前にと、彼女は秘密の話を続けた。
幼馴染であり、身分的にも一番釣り合いが取れているドロテアとの婚約を推す声は多かった。なので最近は二人ともその声にずっと悩まされていたのだ。
彼女の事は嫌いではないが、自身の伴侶にしたいかと言われたら、それは勘弁して欲しいというのが本音だった。
そして、そう思っているのは彼女も同じだったのだ。何故なら彼女は、幼い時からずっとルカスの事が好きなのだから。
「そこで、私たちがお互い好きな人と婚約出来る様に協力し合うのよ。」
「婚約って、俺は何もそこまでは考えていない……」
キラキラした顔でドロテアがそう持ちかけてきたのに対し、レナードの困惑は続いていた。指摘されたように、確かにアイリスに惹かれている自覚はあるが、この想いがまだそこまでは結びつかないのだ。
自分の立場はよく分かっているつもりだ。
この国の王太子なのだ。
そんな自分は軽々しく婚約したいなどと口に出してはいけなかった。自分が望めば、きっと相手の意思など踏み潰されてしまうから。
「じゃあ今から考えて!というか、そっちがそこまで考えてなくてもそれはそれでいいから、私とルカス様の仲を取り持ってよ。」
「……幾度となくアシストしてるつもりではあるんだが……相手があのルカスだからな……」
「それを、なんとかしてって言ってるの!」
「分かったよ……。善処するよ……」
苦笑しながらレナードは承諾した。ルカスの性格はよく分かっているし、今までもそれとなくドロテアに手を貸していたのだが、それらが全てにおいて全く実を結んでいないのを見ると、これ以上のアシストは難しいと思っているが、懸命な幼馴染を応援したい気持ちはあるので、もう少しだけ何とかしてあげようと思ったのだ。
「えぇ、お願いね。代わりに私も出来ることあれば手伝うわよ。」
レナードの返答に満足したドロテアが満面の笑みで右手を差し出してきたので、レナードも仕方ないといった感じで手を差し出して二人は握手を交わした。
晴れ晴れとした表情のドロテアとは対照的に、どこかすっきりしない表情のレナードは、漠然と考えていた。
アイリスの事は好ましく思っているし、もっと二人で話す時間が取れたら良いなと思っている。呪いの解呪役という役目が終わっても、彼女との縁は切りたくないと思っている。だけれどもその先はどうだろうか?
自分が彼女とどうなりたいか、今はまだレナードには、明確に浮かばなかったのだ。
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