第一章 02

見慣れた制服に着替えながら、新しいリボンを手に取る。

私が通う学園は女子生徒は襟元につけるリボンの色、男子生徒はネクタイの色が違う。

1年生は黄色、2年生は青色、3年生は赤色。

今日から私は青色のリボンになった。


「黄色のリボンもとてもお似合いでしたが、青色もお似合いですね」

「そう?そんなに変わったものではないと思うけれど、ありがとう」


新学期初日。

公爵家ということもあり、何かと注目されてしまうことが多いが私はあまり目立つことが好きではない。

今まではなるべく目立つような行動を避けてきたが、今日から殿下が迎えにきてくださることになっている。


何事もなく1日が過ぎればいいのだけれど…。


ートントンッ


「どうぞ」

「皇太子殿下が到着されました」

「すぐに向かうわ」


考えても仕方ないと自分との気持ちに折り合いをつけ、自室の扉を開けた。


「おはよう」

「ひっ!?…で、殿下!?」


馬車の中で待っていると思っていた殿下が、まさか扉の前にいるとわ思わなかった。


「待ちきれなくてここまで来てしまった。驚かせてしまいすまない」

「い、いえ。ですがもしよければ今後は客間でお待ちいただけましたら嬉しいです」


今までは公式の場での挨拶程度しか知らなかったけれど、実際に殿下と話してみて印象は変わった。

氷の皇太子なんて呼ばれているけれど、私に向けてくれる表情や声、仕草はとても優しく暖かいものばかり。

そして恥ずかしくなるほどいつもストレートに気持ちを伝えてくれる。


噂話は当てにならないわね。


「青のリボンもよく似合っているな。他の生徒よりも早くシエラ嬢の新しい制服姿をみることが出来て嬉しい」

「ありがとうございます。殿下も赤いネクタイ、とてもお似合いです」


さっと差し出された手に自分の手を重ねる。


「女性を褒めることだけでなく、扱いも慣れているのですね」

「慣れているはずがないだろ?私が女性として扱うのはシエラ嬢だけだ」

「私にはそのようには見えませんわ」

「そうか、私の不慣れなエスコートでも及第点はもらえるようで安心した」



今日までに何度も手紙のやり取りをし、時間を共有してきたことで私と殿下の距離は軽く冗談を言い合えるほどに縮まっていた。



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