六首【誰ぞ彼 私の部屋の 片隅に 今日も居座る 名も知らぬ影】


彼と別れた。


些細な喧嘩をきっかけに、溜め込んでいた不満が爆発してしまった。


「もう出て行って!!」


気が付くとそう叫んでいた。


彼は何も言わずに荷物をまとめると、その日の内に出て行ってしまった。


それからだ。


部屋の隅に、机の向かいに、ナニモノかの気配を感じるようになったのは。


初めは彼と別れてショックを受けているんだと思った。


次第に気配も薄れていくだろうと思った。


しかし私の予想に反して、影は日に日に輪郭を濃くしていく。


そしてとうとう、今日。


私は影と目があった。


私もこの家を出たほうがいいかもしれない。


 誰そ彼 私の部屋の 片隅に 


   今日も居座る 名も知らぬ影

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