第三話
今日はなんだか朝から天気が暗くどんよりしていると思いながらも、これからレオルに会えば全部吹き飛んじゃうと心を奮い立たせた。
いつものように軽い足取りでレオルの所へと向かっている最中、火の国が妙に騒がしいことに気がついた。
「……なにごと?」
首を傾げながら外へと出ようとすると、慌てたメイド長が走ってきてソフィアの腕を掴む。
「お逃げください! ソフィアさま!」
「え? なになに?」
「魔獣が出ました!」
「え!?」
手を引かれるままに廊下を走っていると、庭園にレオルの姿が見えた。
どうやらレオルは、花かんむりを作っているみたいでこの騒ぎにも気がついていないようだった。
「レオル!」
メイド長の手を振り切って、レオルの元へと一目散に走る。
後ろから咎める声が聞こえるが、そんなものは全て無視だ無視。
それよりも何よりも、レオルがそこにいてまだ危機に気がついていないということが、私にとっては大問題だ。
庭園へと駆け抜けて、レオルの手を掴む。
驚いている様子のレオルもまた、大きな目がまるで宝石のようで綺麗……そうじゃなくて!
「魔獣が出たよ! 逃げないと!」
「魔獣?」
「魔獣だよ!? 火の国を脅かす敵!」
「へえ、そうなんだ」
のほほんとした様子のレオルに少しだけガクッとしながら、レオルを立ち上がらせる。
しかし、立ち上がった瞬間にソフィアの前に大きなドラゴンが立ち塞がった。
「え……!? 魔獣!?」
「ソフィア! 危ない!」
ドラゴンがソフィアに向かって火を吐き出した時、レオルがソフィアの前に立ち塞がり、火を受ける。
「レオル!」
倒れるレオルの身体を抱きとめて、怪我を確認する。
水の国の王子は火が直撃する前に水のバリアを張ったようで軽傷で済んではいたが、それとレオルが怪我をしたことは別問題だ。
レオルのホイップクリームのような肌が怪我をおっている。
それは許しては行けないことだ。
ソフィアはレオルを地面に下ろすと、ゆっくり立ち上がりドラゴンに向かって指を指す。
「私のレオルになにするの! あなた絶対許さないんだから!」
私に火の国を守る力があるというのならば、今がその時。
逆に今じゃなかったらいつ使うの!
「私は火の国の力を受け継いでるんだから!」
叫ぶソフィアを無視してレオルに近付こうとするドラゴンに今度はソフィアが立ち塞がる。
まさか、人間だけでなく魔獣すらも魅了してしまうなんて、罪なレオル!
でもそんなレオルのことが私大好き!
ドラゴンがソフィアに向かって火を吐き出そうとしているのが分かり、思わず目を閉じた。
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