第27話
祐奈の告白3
夏休みがそろそろ終わり……。血のつながりのない姉と、兄との長い休みはどうなんだろう……? と考えていたけれど、高校生の姉はいつもの通り、家事に明け暮れていたし、兄は夏期講習に毎日でかけていく。
ただ、兄はどうせ女の子と会っているのだ。
姉だって、それは気づいているはず。女性の方が、そういうところは敏感だ。
でも、この姉弟は何ごともなかったように、日常を過ごす。
たまに兄が、姉がいるキッチンに入っていったことを確認し、私が邪魔するように入っていったこともある。それでも兄は冷静だった。むしろ、姉の方に少しの動揺がみられたぐらいだ。
心のない人……、それが兄への評価だ。
何があっても、ほとんど動揺をみせない。だからさらっと対応できてしまう。人は基本、動揺するから失敗したり、嘘が見抜かれたりするけれど、心がない兄にとっては隠すとか、そういう必要もない。
そんな兄に、少しいたずらをしてみたくなった。
それは些細な思いつき……。
自分が兄の動揺する姿をみる……。そんな特別を得たい、という浅はかな考えでもあった。
兄が一人でソファーにすわっているとき、その対面にすわって話しかけてみた。
「兄さんは、どこの高校いくの?」
「まだ決めてないよ」
「でも、もう志望校はだしたんでしょ?」
「仮に……だよ。夏休みを過ぎて、成績がでて、それで最終決定さ」
「お姉ちゃんのいる高校?」
「あそこもそこそこレベルが高いけれど、ちがう高校にしようと思っているよ」
「へぇ~……。一緒の高校に行きたいのかと思った?」
「なぜ?」
「だって、兄さんはお姉ちゃん子でしょう?」
「ほとんど姉弟の二人で暮らしてきたから、そこは否定しないけれど、だからといって、それで進路を誤るほど、愚かじゃないよ」
兄はそういって笑う。ブレないな……。私はソファーにすわりながら、少し短めのスカートにもかかわらず、体育座りをしてヒザを抱えた。レギンスも穿いていない、パンツが丸見えになることを知った上で、あえてしてみせたのだ。
「パンツ、見えているぞ」
兄は動揺もみせず、そういった。
「いいよ、別に。だって兄さん、洗濯した私の下着とか、見ているでしょう?」
「それと穿いた状態はちがうだろ? 恥ずかしくないのか?」
「だって、兄妹じゃん」
兄がどう動くか、見たかった。全然、動揺してくれない。むしろ少しぐらい私の下着をみて、反応してよ……と思った。
兄は立ち上がった。私の方に近づいてくる。私はこのとき、初めて挑発したことを後悔した。兄が、姉の胸をいきなり鷲掴みにするところを見た。私にも……それが鼓動を早鐘にする。
でも兄は、私がひざを抱えていた手を外して、足首をつかむと、それを床へと下ろしただけだった。
「普段の行動は、外でも不意にしてしまうことがある。だから家でもちゃんとしないと……」
私はホッとすると同時に、拍子抜けした。私は女の子とみられていない……。そんな思いが、私を冒険へと走らせるキッカケになったのかもしれない……。
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