第25話
陽葵の告白3
夏休みもそろそろ終わり。
つまり、彼との関係も終わり……にするつもりはなかった。
でもアイドルのオーデションもはじまり、この関係をつづけてよいものか? 悩んでもいた。
彼はバラしたりしない……だろう。そういう心配はないけれど、世間に知られたら、スキャンダルになることも確かだった。
「どうしたの?」
彼に尋ねられ、私は「アイドルになったら、学校のトモダチと離れ離れになるのがつらくて……」と、嘘をついた。
「ミシェラとか?」
「私たちは落ちこぼれ組だけど、互いに気取ったり、気をつかったりする必要がなくて、気兼ねなく付き合えるの」
愛想よくふるまうことも、異性を意識してうごくこともない。言いたいことを言い合って、悩みも打ち明けられる相手……。確かにそれは、私にとって初めての体験といっていいだろう。
私立の、そこそこ出来のいい学校なので、隠しようもなく成績で見栄えがしなくなった。そのことで吹っ切れた部分もあった。
「友達は一生だ。それは今、そうやって付き合えているのなら、例え学校を変わってもそうさ」
彼は知ったようにいう。
彼に友達がいないことは知っていた。小さいころから大人びて、一目置かれる存在となってしまった。こんな大人のエッチができるぐらい、世間を知ってしまった。同じ世代と、対等に付き合うことは最早ムリなのだ。
「あなたに、そういうトモダチいる?」
あえて尋ねてみた。彼は小さく首を横にふって「いないよ」とだけ応じた。
彼は寂しそうではなく、諦観だった。
「私が……トモダチになってあげようか?」
私の口から、ついそんな言葉が漏れたことに、私自身も驚いた。
「友達はこんなこと、しないだろ?」
彼は濃厚なキスをしてくる。軽いものなら、友達でも親愛の情としてかわすかもしれないけれど、それは舌を絡ませる濃厚なものだった。
「するわよ。セフレっていうでしょ?」
唇を放した後、脳内がとろけそうになる中、私は精いっぱいそういってみた。
「セフレは友達じゃないよ。セックスしかしない友達なんていないだろ?」
「でも、私はあなたに色々なことを相談するし、相談して欲しい、とも思っている。あなたの悩みを受け止めきれるかは分からないけれど、エッチをするからって、トモダチになれないわけじゃないでしょ? エッチをしても、別にそういう関係になってもいいじゃない」
彼は少し驚いた表情をしていたけれど、笑顔をみせた。
「なるほど、そうかもしれないね」
そう、それは私のイイワケでもあって。
彼とはトモダチだから、一緒にいる。恋人じゃない、エッチをする間柄、でもトモダチ――。
本音を言いあえて、悩みも相談できて、互いのことをよく分かっていて……。これ以上のトモダチがいるだろうか?
私は自分の悩みを、今こうして彼に話したことでスッキリしていた。だからトモダチ。彼だってそうだ。今こうして、悩みが解消したではないか……。
もし私がアイドルになっても、トモダチだから一緒にいる……。私たちはまた互いを求め合った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます