第23話

   桃の告白


 私は小学生のとき、とある会に呼ばれた。


 別名『処女捨て会』――。


 別に好きな人もいないし、好きな人に初めてを捧げたい、とも思わない子が集まっての体験会。初恋の人と一生……というのでもない限り、そういう制約は逆に重たくなる。


 家に誰もおらず、チャンスが訪れた家に、女の子たちが集合する。呼ぶのは彼、夕陽君である。


 彼がそういうことに慣れている、という話は耳にしていた。


 私たちなんかよりずっと大人びていて、クラスの中でも浮くけれど、決してイジメられているとかではなく、みんなが何となく敬して遠ざける……そんな彼。


 私たちの話を聞いて、彼は来てくれた。


 その日は三人。家を提供した子が最初、というのが決まりだ。


 残った二人はリビングで待つ。テレビを点けているけれど、内容はどうでもよかった。スマホで動画をみても、頭に入ってこない。


 もう一人は、顔と名前は分かるけれど、話したことのない相手だ。相手も緊張しているのが分かり、口数も少なくなる。


 私だって、それがどんな体験か? まだよく分かっていない。私も緊張しているのが、自分でも分かった。


 三十分ぐらいで、一人目が終わった。二人でもどってきて、もう一人の子を連れていった。私は最後だ。


 終わった子は、頬を上気させて、ソファーにすわっても肩で軽く息をついている。それは疲れていて呼吸が荒くなったわけではなく、興奮して浅くなっているのだ。


「大丈夫?」と尋ねたけれど、彼女は夢見心地な瞳で、虚空をみつめながら小さく頷くだけだ。


 二人目は二十分ほどで終わった……というより、彼女が動けなくなったので、彼が一人で呼びにきて、連れていかれた。


 前に何度か遊びにきたこともあるけれど、前と同じはずなのに、ちがって感じた。それは鼻孔をくすぐる、これまで嗅いだことのない匂いもそうだし、そこに横たわっている二人目の子が、全裸でいることもそうだった。


「足腰が立たなくなったようだ。このままでいいかい?」


 ここまで来て、断るのも不自然だったので、私も頷く。彼はすぐに静かに私を抱きしめ、キスをしてきた。


 彼だけは一回、一回服を着直して、最初からの手順を踏んでくれる。彼はとても優しく、とても丁寧だった。


 まだ胸も膨らんでいないけれど、私は彼を受け入れ、そしてイッた。初めてで脳内を突き抜ける感じを、私は体験した。


 前の二人もそうだったのだろう。あの恍惚とした表情と、ここで横たわっている子も、こんな気持ちのいいことをされたから、そうなったのだ。


 私が終わったのを待っていたかのように、もう一人が入ってきて「もう一回、もう一回」と、おねだりする。さっきまで横たわっていた子も「私も、私も」と起き上がって哀願する。


 処女捨て会は、結局4Pになった。私はそれから、エッチをしていない。だってあんな気持ちいいことを憶え、虜になったら、抜けだせないと思ったから。大人の扉を早く開けすぎたのだ……。


 でも、彼の顔をみるたび、私のあそこがじゅんと濡れてくる。私はあの日のことを思い出しながら、一人で慰める……。

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