第22話

   ミシェラの告白


 二年前、父親が仕事で日本にくることとなり、家族もそろって来日した。


 私はこの国に興味があった。マンガ、アニメにはまったからだ。


 日本語もそこそこ覚えて来日したから、学校も一般校に通う。むしろ、マンガ、アニメに登場するような学校に通いたかった。海外からの留学生を受け入れている学校をえらんで入学した。私はこの二年、日本を満喫していた。


 ただ一つ、不満があるとすれば、日本の男の子は何だか物足りない点だ。


 晩生というのではない。むしろ積極的な子は積極的だ。でもがっついている感じがして、余裕がない点が嫌だった。


 私の友人に、陽葵がいる。男への訴求が私と似ている点で、意気投合した。


 そんな陽葵から、男の子を紹介された。


 私は処女でいることが疎ましかった。そんな話をすると、後腐れなく遊べる相手、ということだった。


 会ってみて、なるほど……と思った。これまで会った、どんな男の人とも違う。強いていうなら、無色透明――。


 場所は陽葵の部屋を貸してもらった。いつもホテルだとお金がかかるので、最近では彼女の部屋でエッチをしているらしい。


 彼女は当分、彼氏はいらないという。彼のことは、彼氏にするつもりもない、とのこと。あれだけ男に飢えていた彼女をそこまで言わせる男……に興味もあった。


 実際、彼は上手かった。私はキスまでなら、色々な人とかわした。でも、すぐに胸に手を伸ばしてくる男や、下心が見え見えの相手にはうんざりしていた。


 彼は紳士だった。とんでもなく……。さらに彼は女性を知り尽くしていた。この歳にして、熟練の技術者のようだった。


 初めての相手にも、丁寧にそれを施してくれた。


 私がこの歳まで処女だった理由……。金髪の女性はアニメや漫画で、巨乳で描かれることが多い。私はちがった。


 胸をさわってくる男子は、必ずがっかりする。見せかけ、パットだから……。


 私はそれが嫌だった。ブロンド、ロン毛で大人びた顔立ちなのに、胸が残念と思われる……。


「彼は大丈夫よ」


 陽葵にそう言われたけれど、彼は小さな盛り上がりを丁寧に、ゆっくりと責めてくる。むしろそうであることを、自然と受け入れてくれる。指で、舌で、唇全体で愛撫する。


 私はそれだけでイッてしまった。人から隠すようにしていたところが、まるでそこが私自身になったかのように、すべての性感帯がそこに集まり、私を敏感にしてくれているような、それほどの感覚を覚えた。


 彼に貫通してもらい、私の儀式は終わった……。


「彼と付き合いたい」陽葵にそう伝えると、彼女は首を横にふった。


「苦労するよ、きっと」


「どうして?」


「彼はそういう人。多分、誰かを愛することはない。だから私は、身体だけの関係でいいかなって思っている。それ以上深入りしない方が、幸せだと思って……」


 私と彼女の、男をみる感覚は似ている。私も二度、三度と会ううちに、言っている意味が分かった。


 私の初めての相手は、心のこもったエッチをするのに、心のない人だった……。

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