第21話

   陽葵の告白2


 退屈だと思っていた夏期講習が、私にとっては転機となったことは間違いない。


 それは今まで、エッチなんて大して気持ちよいことではなく、愛を確かめるセレモニー……ぐらいに思っていた。


 しかし気持ちいいことだと、初めて気づかされた。


 ただ、この人と恋に落ちることはないだろう。彼も私のことを好きだから、それをするわけではない。求められるから、こなしているような感じだ。


 恋人ができても、夫ができても、この人となら不倫してもいいかも……とも思うけれど、きっとそうはならないだろう。


 他人の人生には、特に好きでもない人のそれに興味はないけれど、きっと彼は長生きしないだろう。それはこの繊細さにある。相手のことを考え過ぎて、気持ちよいことを精いっぱいしてあげようとする、奉仕精神――。


 こんな細やかな気遣いができる人、初めて出会った。好きになりそうだったこともあるけれど、深く知れば知るほど、より濃密なエッチをかわすほど、この人を好きになってはいけない……と思うようになった。


 胸も、これまで付き合ってきた男は強く揉むことばかりで、自分だけ気持ちよくなることを優先していた。


 でも彼はちがう。ゆっくり外側から、まるで外輪を散歩するように穏やかに、ゆっくりと二本の指がすすんでいく。その間も親指は乳輪を辿るように、同時に刺激をくわえ、乳頭も責めながら、私の胸の奥まで伝わるよう、優しく表面をなぞるようにさすってくれる。


 私は中学生では胸も大きい方だと思うけれど、強くされたら痛いのだ。まだそれはパンパンに張り、大きくなることを意味していた。


 そんな箇所だから、その優しく、それでいて刺激を与えてくれるのが心地よい。


 時おり腰遣いは荒々しいけれど、それは数をこなして、私の感覚が鈍くなっているときだ。


 でも、決して痛みはない。私への刺激を考え、そうしてくれるだけだ。


「私、アイドルにスカウトされちゃった」


「うけるの?」


「うちの学校、アイドル活動……というか、アルバイトは禁止だからね。私はエスカレーター式で上の学校に入ることを考えていたけれど、ちがう高校に行って、アイドルをするのもいいかなって……」


「受験勉強が大変になった?」


「それもある……かな」


「アイドルになるかどうかは、君の判断だけど、受験勉強はしておいた方がいいよ。だってそれは、君が今、頑張ったことの証明になるから。逃げたのではなく、立ち向かった、と思えるから」


「へぇ~……。そんな先生みたいなことを言うんだ?」


「先生か……。そんなつもりはないし、人に教えられることなんてないけれど、逃げたらきっと後悔するよ」


 彼はそういって、少し遠い目をした。


 自分を主張することもあるんだ……。ちょっと驚いたけれど、でも私のことを考えてのアドバイスと考えることにした。


 だって、今も彼は私のことを優しく愛撫し、気持ちよくさせてくれているのだから……。

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