第19話

   水穂の告白5


 夕君と私は、残念ながらオツムの出来はかなりの差もあって……。


 一応、私も夏期講習に参加することになったけれど、夕君とはレベルの差もあり、ちがうクラスになった。なので、すれ違うことさえない。


 夏休みなんて、遊べる絶好のタイミング……と思っていたけれど、進学を考える人にとっては、そうではない。同じ塾に通えても、どうやら人目を盗んで……というチャンスはなさそうだ。


 でも、そんなときにある噂を聞いた。


 同じクラスの陽葵さんと、夕君が親しい……というのだ。


 彼女はかわいい、と早くから噂になった。注目を集めただけに、ぶっきら棒であまり周りとつるもうとしない夕君と、親し気に話をする姿を目撃され、そんな噂が広まったのだろう。


 同じ中学の人たちの間なら、大した話題にもならなかったかもしれない。


 でも、ちがう中学の人が集まる夏期講習の場だったから、驚きをもってみられたのだろう。


 だけど、私は知っている。夕君に他意はないし、恋心もない。ものすごく優しい人だから、相手から望まれればそれをするし、すごく丁寧で、気持ちいいけれど、心は篭められていない。


 恋愛をするつもりはないし、誰かと寝るのも、それは相手から望まれたからだ。


 私のところに帰ってきてほしい……と思うけれど、最近ではそれも難しいのではないか? と感じるようになった。


 夕君はここ最近、さらに心が感じられなくなってきた。


 近くにいるけれど、どこか遠いような……。


 それは誰かを愛しているからではない。誰も愛せなくなっている……そう感じさせるからだ。


 今日は先に私が終わったので、夕君が終わるのを待っていた。


「夕君! 今日、しない?」


 私は一人ででてきた夕君に、単刀直入にそう声をかけた。


 夕君は一瞬、戸惑ったような顔をしたけれど、頷いてくれる。二人でホテル街に歩いていくと、そこに顔を隠すようにして近づいてきたのは、陽葵さんだった。


「一緒に、いいかな?」


 少し戸惑った風だけれど「気持ちよくしてくれたら、構わないわ」


 その日、私は初めて三人でした。夕君は相変わらず優しくて、うまくて、私はイキっ放しだった。


 陽葵さんもそうで、私以上に大きな声をだし、気持ちよさそうにイク。


 三人だと集中できないかと思っていたけれど、そんなことはない。夕君はやっぱりうまく二人を丁寧に相手をしてくれる。


 でも思った――。


 頭が痺れるような快楽とともに、私はベッドの端に横たわり、夕君と陽葵さんがするのを見ていたが、夕君のそれはすごいテクニックだ。


 でも、夕君が愉しんでいるようには見えなかった。


 あんな可愛らしい、アイドルといっても不思議でない女の子とエッチをしているのに、何だかとても義務的にみえる。


 どんどん心が消えていく……。夕君が無表情で、陽葵さんにリズムよく突き立てているのをみて、私は寂しくなった。


 そして飛びつき「私も……、私ももう一回!」とおねだりする。少しでも彼の心に近づきたかったから……。

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