第18話
陽葵の告白1
私は私立の中学に通う女の子。中高一貫校で、エスカレート式に……と考えていたところ、計算が狂った。成績により、2割ほどが試験をうけ、合格しないと進学できないと分かった。
否、分かっていたけれど、考えないようにしていた。でも、愈々進学が近づいてきて、私も試験を受ける組と実感するようになり、親に泣きついて、夏期講習をうけることにした。
そこに彼はいた。
すぐに私は察した。この人は、女の子を知っている……。しかも、がっつく感じはなく、紳士だと……。
私は自分でいうのもなんだけれど、顔はイケている。これまでも、十八人の男の人と付き合って、別れた。
中にはエッチをした人もいるし、何もしなかった人もいる。でも、ほとんどが告白されて付き合い、私からふった。
でも、彼には私からコクッた。付き合いたい、ではなく「エッチしない?」と。
彼は少し驚いたようだけれど、自然と「どうして?」と応じた。
「溜まっているわけじゃない。でも、あなたとはしてみたくて……」
私も、そんなことをいう自分に驚いていた。でも、本当にそう思ったのだ。
どうせ夏期講習の間だけ。ひと夏の思い出として、青春の1ページである夏に勉強だけで終わるのは嫌……とか、色々と思うところはある。
でも、本当に彼としてみたくなったのだ。
彼は「ホテルは初めて」と言っていたけれど、ここは年上の彼と付き合ったときに教えてもらった、穴場だ。無人のカウンターで、監視カメラがついているけれど、年齢でのアウトがない。
彼は私が思っていた通り……ううん、それ以上だった。
キスから上手かった。男なんて、自分勝手なエッチをするだけ……と思っていた。
「あ……、え……、うそ……」
私は初めて、頭頂部まで突き抜けるような快感を覚えた。私は自然と「もう一回、もう一回」とおねだりしていた。
もう私は足腰が……、下半身が痺れて立てなくなるほどだった。
彼にしっかりと抱き締められながら、私も思った。彼は、相手のことを愛していないから、優しくできるのだ。
それは不倫相手との情事でみせる、男の余裕に似るのかもしれない。恋愛のように相手しかいないと、余裕がなくて感情的になったり、逆に卑屈になって頼りなくみえてしまう。
でも、それだけではなさそうだ。
彼は多くの子と経験している。何がそうさせたかは知らないけれど、相手の望みを叶える……そんなエッチをしてきたはずだ。私ともそうだった。
自分がない……のかしら?
恋人でもない私に、立ちいって聞けるような話でもない。そんなことを察しられるぐらいの脳はある。おバカな私は、空気を読み、大人や周りのトモダチとの間をうまく渡って生きてきた。
でも、彼はそんな誰ともちがう。
私が空気を読んでも、何も感じさせてくれない人。
永遠の虚無――。
でも、私はそんな相手だからこそ思う。つまらない夏期講習だけれど、楽しいことがいっぱい起こりそうだ。
むしろ気持ちいいことがたくさん起きる。そんな夏の予感があった。
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