第16話

   水穂の告白4


 彼の両親が旅行に行く、という。妹の祐奈も一緒に旅行にでかける。


 私はチャンスだと思った。朝陽さんはいるけれど、夕君と二人きりでしっぽりとできる……そう思ったから。


 でも、夕君に「家に行っていい?」と尋ねると、口ごもった。


 あれ? 喜んでくれると思ったのに……。


 そのときの夕君の目線の動きで、私は勘づいてしまった。


 朝陽さんと……二人きりになるのが嬉しい?


 私に芽生えた、初めての疑惑だった。仲がいい姉弟……とは思っていない。それほど一緒にいないし、むしろ夕君が距離をとっている、と感じていた。


 お姉さんとしてではなく、それはお母さんとして、私たちが小学校高学年のころ、お姉さんが中学に上がったときぐらいから、親離れをしたのだと思っていた。


 朝陽さんはお母さんだ。それは私に対しても、世話を焼こうとするぐらい。


 でも、彼女の後を追うように、私もその年齢になって、改めて思う。


 すごいことをしていた、と……。


 私には決してできない。もし自分の弟がいて、母親がいなかったとしても、彼女と同じことをするのはムリだ。


 夕君も、それが分かっている?


 母親の愛に飢える……そんな気持ちに、またなったのだろうか?


 小さいころから一緒にいるけれど、むしろしっかりしよう、との意識が強かった人だ。高校受験を前に、不安なのかしら……?


 でも、そのときは私に頼って欲しかった。


 私と一緒にいたい、と思って欲しかった。


 でも翌日、私の家に誘うと、応じてくれた。


 家でする……といっても、私の家族が家にいるので、服をきたままだ。


 彼は優しく私の頭を抱えるようにして、唇を重ねてきた。私も彼の頬に手をふれつつ、彼の暖かい吐息、湿り気を帯びた唇、舌の感触まで、いつも通りの優しいタッチで絡めてくる。


 私の方が興奮し、「ん……ん……」と求めてしまうぐらいだ。


 互いの唾液が交じり合い、十分にその成分がどちら由来かも分からないほどに混濁したころ、互いに唇を放す。


 彼は私のTシャツをたくし上げ、ノーブラでむき出しとなったそこに吸い付いてきた。すでに私のそこも、彼に吸われることを前提にするかのように、ピンと突き出している。


 Tシャツを着たままなのは、いつでも下ろせるように。階段を上がってくる足音が聞こえたら、何ごともなかったかのようにふるまうため。


 丁寧にそうして気持ちを高めてくれるのが、私は好き。


 指で丁寧になじませてくれるのも好き。


 綿でできたショートパンツを少しずらし、私は彼が挿入しやすいようにした。


 床に座り、ベッドに背中をあずけながら、二人とも体を斜めにずらして、互いの下半身を接近させる。


 難しい体勢だけれど、もう慣れたものだ。彼はしっかりと奥まで入ってきた。


 あれ? いつも早く動くタイプではないけれど、今日はゆっくりと……それは疲れているようでもあって……。


 やっぱり昨日、何かあったんだ……。


 何か? そんなことは決まっている。まさか、朝陽さんと……?


 私の中に芽生えた懐疑は、彼の律動とともに少しずつ大きくなっていった。




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