第14話

   祐奈の告白2


 歪な私の姉と兄。血のつながりはまったくなく、母親の再婚相手の連れ子。


 適当に付き合っておけばいい……と思っていた。


 でも興味がつきない。いつの間にか、もっと知りたくなっていた。


「お兄ちゃんって……」


 私が話しかけても、少し疎ましそうな顔をして顔を背けてしまう。それは父親の再婚によって、いきなり現れた妹――。どう付き合っていいか分からない、戸惑っている顔だ。


「女の子のトモダチ多いよね? 幼馴染の水穂さんとは、未だに家に行き来する関係だし……」


 兄の夕陽はふいっと立ち去ろうとする。


 特段、秘密主義ということではなさそうだけれど、自分に立ち入って欲しくない、という感じが滲む。


 私もあまり深入りはしない。


 まだ小学生、お兄ちゃんとの関係が悪化し、家に居づらくなったら大変だ。


 家のことは朝陽お姉さんが、ほとんどする。


 薄幸そうな人……。第一印象で、今もそれは変わりない。


 私にもめいっぱい、気をつかってくれる。


 二人めの母親ができたようだ。しかも、とっても優しい……。でもそれは、とても歪だ。十代の彼女が、私に対しても母親のようにふるまおうとするのだから……。


 でもある日、私は見てしまった。それは進路について、二人で話していたとき、苛立った兄が、いきなり姉の胸を鷲掴みにしたのだ。


 朝陽はふり払わなかった。少し痛みに顔を歪め、そっと彼の手の上に、自分の手を重ねただけで、会話をつづけたのだ。


 この二人の間では、それが当たり前のこと……? 少し驚く。


 私にみられている……と思っていなかったからこそ、私たちが家族となる前の、二人の関係を垣間見るようだった。


 ある日、私は朝陽姉さんに聞いてみることにした。


「夕陽兄さんって、朝陽姉さんと仲いいですよね?」


 ちょっと驚いた顔をして「そうかしら?」


「だって、思春期で、反抗期なのに、朝陽姉さんとぶつかったりしないよね?」


 ぶつかる……という単語に少し反応した。でも、すぐに笑顔になって


「二人でいるときは、結構文句もいうし、わがままも言うのよ」


「じゃあ、私たちに見せない姿を、お姉さんにだけは見せるんだ?」


 嬉しそう……。これで確信した。


 この姉弟は、心のどこかで惹かれ合っている。でもそれが間違っていることに気づいているし、それを隠そうともしている。


 きっと兄のそっけない態度は、そういうことだ。では姉は? 憎からず思っているけれど、自分の方が年上だという意識が、彼女を踏みとどまらせている。


 そのタガが外れるポイントって、どこだろう?


 そんなとき、両親が旅行にいく、という。本当は夫婦水入らずででかけたいのだろうけれど、私はついていくことにした。それは姉弟を二人きりにしたかったから。こっそりと母親のカバンから傘を抜いて、忘れるよう仕向けたりもした。


 きっと、そうしたイベントを乗り越えた方が、より二人きりの時間を意識すると思って……。


 私はただ知りたかったのだ。この姉弟が、どういう関係なのかを。そして私は知ってしまった。知ったからといって、何をするつもりでもなかったのに、結局ああなってしまうなんて……。

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