第13話

   明日菜の告白3


 私たちはホテルのトイレで、エッチをしていた。


 今日は職場体験の日――。


 私はクラスでもあまり話をする人がいないので、彼のところに入れてもらった。


 職場体験としては外れ……とされるホテル。それは実地の仕事が多くて、お土産、見返りも少ない。


 彼もあまり友達がおらず、要するにまとまりのない班だから、外れがまわってきたのである。


 でも、こうしてベッドメイクや各部屋の掃除など、最初こそ指導をうけるけれど、そのうち生徒だけでやってみよう、ということになり、生徒だけでいる時間が長くなる。


 そして、二人組となって作業をするとき、少し早めに仕事を終えて、こうしてエッチをしているのだ。


 さすがにベッドで……とはいかなかった。汚しちゃいそうだから……。


「ふあ……」


 私は二回目、イッた……。彼は回復が早い方だけれど、さすがに三回目をする時間はなさそうだ。


 でも余韻をたのしもうと、彼の耳元に口をよせた。


「夕陽は将来、何になりたいの?」


 他愛もない会話だったけれど、彼は私の胸に手を這わせ、優しく愛撫してくれながら「分からないよ、そんなこと」と、ぶっきらぼうにいう。


「考えたこと、ないの?」


 深い意味があって尋ねたことではない。でも、彼はしばらく考えた後


「大人になれるのかな……」


 そう呟いた。私が驚いたのは、同世代の男の子たちの中で、一番大人だと思っていた彼が、それに悩んでいたからだ。


 むしろ、無邪気に、安穏とそれを受け入れられない。大人と同じことをしている私たちだけれど、心まで大人になっているわけじゃない。


 そんなことを憂悶する彼の表情から、読みとっていた。


 職場体験をしても、大人になったわけじゃない。


 仕事をする、それでお金をもらう、大人ってそういうこと。


 いくらエッチをしても、私たちは大人になれるわけじゃない。結婚をしても、子供のことを考えず、離婚をしてしまうような、それが大人だ。


 自分で色々と考え、行動する、


 でもそれは自分にとっての正解であって、子供のためでもない。


 自分で何かをすること、それが大人だ。今はまだ、私はまだ何かをするだけの権限も、力もない。


「そろそろ戻ろうか……」


 彼はそう言ってズボンを上げた。彼はこうやって、自分の行動を自分で決める。


 それが大人に感じさせる。多分、彼も親との関係はよくない。自分で色々と決めるしかなかった。


 私もそのはず……だけど、彼には甘えてしまう。彼がどんどん決めて、先にすすんでいくのを心地いい、と感じてしまう。


 彼は部屋をでる瞬間、不意にキスしてきた。


 今日だって、もう何度も唇はかわしているけれど、こういうところに喜びを感じてしまう。決して自分勝手に終わらせるのではなく、私のことを考えてくれる。


 こういうところが、大人なのだ。


 そして、それはテクニック面でも……。色々な子と関係していることは知っているけれど、私は別に構わなかった。だって今は、彼の大人な面に寄りかかれていることで幸せだったから。




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