第8話
明日菜の告白2
転校生で、両親が離婚したことを言えない私に、真の友達なんていない。
表面上、仲良く付き合うことはできるけれど、家に友達を呼ぶことなんてできるはずもない。
でも、彼は私の家にくる。それは非常階段で、情熱的な抱擁と唇を重ねる……その隙間に耳元でささやかれたら、拒否なんてできるわけがない。
祖母の家は、古い。今でいう古民家だ。
昔はお蚕さんをしていた、という屋根裏部屋に、自分の部屋がある。昔は母がそこを自分の部屋としていたそうだけれど、それほど広くないので、今は私一人がつかっている。
そこは根太に板を張っただけ。だから歩き回ると後が下に響くぐらいだし、まして大人だとまっすぐに立てる場所も少ない。だから子供部屋、なのだ。
祖母と、母にみつからないよう、彼をその部屋に導き入れた。
彼はこういう家が物珍しいのか? 辺りをみまわしている。それは私も、小さいころから遊びに来ていて、知っていたけれど、ここで暮らすとなったら、色々なことにびっくりしたものだ。
彼は部屋にくると、折りたたんでおいた布団を、わざとだしてくる。
「きょ、今日はそういうことしないって……」
「しないよ。でも、音が漏れるといけないだろ?」
彼は私の手をひいて、布団の上で抱擁する。
私は……何で彼のことを好きになったのだろう?
私の体の上を、彼の手がさすらっている。私の感じ易いところを、丁寧にこすり上げてくる。
キスだってうまい。小学生で、こんなキスをする人は他にいないだろう……とすら思う。
徐々に彼色に染められていく脳内で、胸を揉みしだかれながら、下腹部から彼が進入してくるのを感じながら、私は考えている。
彼は腰を動かさない。盛り上がっているけれど、そんなことをすれば家中に響くと念を押しているから。
強引なのに、どこか一線は守る。
彼のそうした性質は、どこからくるのだろう?
学校でも、あまり激しく動くことができないので、私たちはこうして繋がり合ったまま、互いをまさぐることが多い。
キスをした後で、ふと彼と目が合った。
これかもしれない……。大人びて、他人と距離を置こうとするくせに、どこか寂しさを漂わす。私はこの瞳に惹かれたんだ……。
私と唇を重ねるのも、体を求めてくるのも、きっとそこに繋がりを求めるから。何が彼をそうさせるのかは分からない。でも、一人を望むくせに、ずっと誰かとつながっていたいんだ。
私もそう……。両親が離婚して、好きだったお父さんとも会えなくなった。母は会うな、といい、私も母に話を合わせて「会わない」という。
その歪み、それが周りの人を遠ざける。周りが幸せそうにみえて、自分が卑屈になるのが分かる。
彼とは似た者同士なんだ……。だから彼と、体を重ねる。足りない部分を互いに埋め合わせる。そうでないと、人として不完全だと感じてしまうから。
彼は互いにつながりながら、ほとんど腰も動かさずにイッたようだ。といって、別にでてくるものはない。私の中で、少し力が抜けただけだ。
私は覆いかぶさってきた彼の体を優しく抱きとめ、そしてその頭を撫でた。
彼はそれに応えるよう、舌を耳の後ろから這わせ、耳たぶを甘噛みしてくる。
私たちはこういうつながりで、満足していた……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます