ああああああああああああああ
「えっ」
「なんで?死刑??」
「鎮まれ、念を押して鑑定するため別室へ案内しただけじゃ。すぐに戻す」
やさしげに笑みながら、のじゃ姫様が次の生徒を促す。
ちょっと怖い。
しかし、次の生徒が水晶に立った途端、選定の間と呼ばれるゴシック調のホールは水を打ったように静まり返った。
「朽木・・・」
イキリ衆の誰かの呟きだけが、大きく耳に付いた。
「む・・・これは・・・村人じゃな。次の者」
時が止まった。
0.5秒くらいだろうが、確かに止まったと感じた。
停止した時の中で、ただ朽木だけがいつものように悠々と戻っていった。
「へぇ~、村人かよ」
剣聖の鈴木がニヤニヤしながら朽木に近づく。
「今までずいぶんとチョーシこいて・・・こい・・・ッ!?」
ナニをしようとしたのか、朽木に伸ばした手を掴まれ、そのまま鈴木は震えながら座り込んでしまった。
「クチキィ!」
拳王・・・勇者だっけ、佐藤が叫び、立ち上がる。
しかし、その僅か視線を移した間に投げられたのか、空中を飛んできた剣聖の鈴木と激突し、もんどりうって倒れ転がっていった。
「剣聖と勇者が、む、村人に・・・投げ飛ばされた?!」
鎧奴達がめたくそ動揺してるが、僕らは(まぁ、そうだよな・・・)と軽く失望した程度であった。
「もう、男子は暴れるのやめてよ!」
このクラス唯一の女子アピール奴、
ナマエが県名と同じなのでカタカナで表記してる戦災じゃなくて繊細さをもつ女生徒だ。
「クチキくんも弱いものいじめしないで」
そして、唯一朽木の怒りを鎮めることができる・・・まあ、怒ってるかどうかは聞かなきゃわからん(聞けば教えてくれる)のだが・・・唯一の人間でもある。
「わかりました、師匠」
そう、師匠なのである。
剣聖鈴木を投げ飛ばした村人朽木の。
怖い。
水晶に歩み寄る姿に緊張感が高まってゆく。
ネガティブなクラスに判定され、中原のように連行されるような事態にもなれば、おそらくは死人が出る。
周りの衛士、その鎧の金属の光沢が僅かに頼もしく思える・・・が、手槍と腰に下げた長剣がより恐ろしい想像を招く。
なんて頭の悪い奴らなのだろう。苛立たしさと共に思う。
取られることを考えたら、とてもそんな凶器を持つことはできないだろうに。
「うっ」
酸鼻極まる土壇場の妄想に、おもわずえずいてしまう。
「賢者か。しかしこれほど英雄的な職能が連発しておると、もはや麻痺してくるのう」
クラスの生徒からは安堵の溜息がひろがった。
「賢者?あたし別に賢くないんだけど・・・成績も真ん中くらいだし」
「ああ、気にするな。魔法を行使する戦闘の職能よ」
「魔法?ヤッター!これであたしも女の子らしく魔女っ娘になれるのね」
くるくると回りながら僕らの方へ退がってくる。
「あたしの魅力で悪い奴らをメロメロにしちゃうぞー☆」
彼女の頭の中の賢者がどのような姿をしていようが、それは重要じゃない。
そう、僕らは絶対彼女に対して悪人になってはならないし、ならない。
前世界でも異世界でも、第一の絶対的な恐怖は彼女なのだから。
たとえ人を食う魔物がいる世界だろうと・・・
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