モデル仲間の美人な子⑤

 ううん、そんなわけないよ。

 ただ、そういうひとなだけかもしれないし。

 もう会わないと思うし。

 そう思っておくことにして、北斗についていきながら、美波は小さくおじぎをして、その場を終わりにした。

「悪いな。引き留められて」

「ううん」

 門を出て、道に出て、駅に向かう。

 話はもう、ごく普通のことになっていた。

「予約しといたんだ。母さんの一番好きな、オレンジマドレーヌを入れて、箱に詰めてくれるように」

「そうなんだ! おばさん、オレンジが好きだもんね」

 答えながらも、さっきの聖羅という子と挨拶が頭から離れなかった。

 聖羅はとても綺麗だった。

 しかもモデルとしてもきっと人気があるのだろう。

 実際、北斗と並んでもまったく違和感がなかった。

 ……私とは違うのかな。

 だって私は普通としか言えないもの。

 たとえ幼なじみだとしても、特別なものを持っているわけでもなくて。



 北斗に特別な仕事仲間がいる。

 そう知ってしまったことに、なぜかちくりと胸が痛んだ。

 まだその意味を、美波は知ることがなかったけれど。



(完)

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イケメンモデルの幼なじみと、秘密の同居生活、はじめました。 白妙 スイ@書籍&電子書籍発刊! @shirotae_sui

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