モデル仲間の美人な子③
美波もそちらを振り向くと、女の子が近寄ってくるところだった。スタジオから出てきたようだ。
知り合いかな、と美波は思う。
次に、モデルさんかな、とも思った。
何故なら、向坂と呼ばれたその女の子は、とても美人だったのだから。
茶色の髪は、きれいに巻かれて背中に落ちている。
前髪は左右に分けられていて、大人っぽい髪形だった。
顔立ちだって。
かわいい系より、目鼻がくっきりしていて、美人系といった顔立ちだ。
美波はそれを見て、ちょっとざわざわしてしまった。
北斗の知り合いなのだ。しかもこんな美人な子が、なのだ。
なんだか気になってしまう。
「北斗くん、帰るとこ? 一緒に帰らない? 車を呼んであるの」
向坂、という子は微笑を浮かべて、北斗を誘った。
だが北斗は美波と約束をしていたのだ。「いや……」と声をにごした。
「悪い。今日はこいつと、ちょっと用事があるんだ」
美波を示して、言ってくれる。
美波はちょっと嬉しくなってしまった。
こんなかわいい子、しかも知り合いらしい子に誘われたのに、自分と用事がある、と言ってくれた。
いや、実際、用事があるのだし、約束していたからそう言って当たり前じゃない。
心の中で美波は首をひねった。嬉しくなるほどのことだろうか。
「そうなんだ。残念。……その子は? お友達?」
向坂と呼ばれた子は、美波に視線をやってきた。
笑顔だった。
笑顔だった、けれど。
美波はまた、心がざわめいてしまった。
この笑顔はなんだか、あまり良くないものではないか。
そう感じてしまったために。
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