北斗のお誘い③

「さ。じゃあ、俺は部屋に戻るかな」

 話も終わったので、北斗は立ち上がった。お茶のコップを持って。

 ちゃんとキッチンへ持っていって洗うようだ。そういうところはきっちりしている。

「あ、じゃあ私も……」

 続いて美波も立ち上がる。同じように、飲み干したコップを持った。

「牛乳、よく飲んでるよな」

 連れ立ってキッチンへ向かって、流しに置きながら北斗は言った。

 美波は「私が洗うよ」と言って、北斗は「じゃ、俺が拭くわ」と言ってくれる。それで美波は蛇口から水を出した。

「牛乳、好きだから」

 北斗の言葉に、美波は何気なく答えたのだけど、何故か北斗はにやにやした。

「チビだもんな。昔っから変わらねぇ」

 言われたことには、恥ずかしくなる。

 確かに自分は昔から、背が低めのほう。

 男子である北斗のほうが、昔からすでに背は高かったのだけど、今ではもう、10センチ以上の差がついてしまっていた。

 その差が悔しいと思っているのに、そこをからかわれては。

「こ、これから伸びるんだよ!」

 美波は怒るやら恥ずかしいやら、混ざった気持ちで強く言ってしまったのに、北斗には笑って流されてしまった。

 そのあと、美波の髪になにかが触れた。

 なんだかひとの手の感触のような気がするけれど?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る