同居の経緯②

 そんな北斗。

 一年間ほど、中学校で会うくらいしか接点がなかったのだけど、冬の終わりにある出来事が持ち上がった。

 北斗の両親が、海外出張することになってしまったのだ。

 でも北斗は人気モデル、できればこの街を離れたくないという事情がある。

 かといって中学生に一人暮らしはできないし、おじいちゃんやおばあちゃんの家も遠い……。

 そこで白羽の矢が立ったのが、美波の家だった。

 なにしろ幼なじみだ。両親同士、家族ぐるみの付き合いが、以前はあったのだ。 

 そのことでお父さんやお母さんが「北斗くんなら、よく知ってるし、良い子だし」と受け入れることにしたらしい。

「海外出張から帰るまで」と期限付きではあったが、北斗は美波の家に住むことになった。

 美波にとっては、これ以上はないほど大事件、であったが。

 それでこの春、お互い中学三年生と、二年生に進級した一ヵ月ほど前から、同じ家で暮らしている。

 ただし同じ家で暮らしていることは、学校では秘密だった。

 北斗に「言ったら出てく」と言われてしまっていて、美波はもちろん秘密を守っていた。

 北斗はきっと、幼なじみの女の子、しかも年下の子の家に住んでいるなんて、知られたら恥ずかしいんだろうな、と推測していた。

 北斗に迷惑や嫌な気持ちをさせたくないし、美波はちゃんと秘密にしていたのである。

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