秘密の同居生活①

「お前なぁ、あんなとこで、なにタメきいてんだよ」

 その夜。

 美波の前にどっかり座っているのは……北斗であった。

 でも昼間のスタジオの様子とは、正反対。

 クールなポーズもない。

 どっかりあぐらをかいているし、眉間にはしわが寄っている。

 おまけにほおづえまでついていた。

 非常にお行儀が悪い。

 さらに服もクールとはほど遠い。ゆるっとした、ただのグレーのスウェット姿。

 こんな姿を見れば、見学に来ていた女の子たちは、がっかりするか、あきれるかするかだろう。

 美波は昼間とのギャップに混乱しながら、それでも「ごめんなさい……」と言った。

「だいたい、なんでお前が見に来てんだ。招待した覚えはないぞ」

 それは確かにその通り。

 そしてそれを事前に言わなかったのも美波なので、美波はもう一度、謝るしかない。

 でも一応、理由はあるのだ。

「ち、違うよ、あずみが見に行きたいって言って、申し込んだら当たっちゃったんだもん」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る