第4話

「グゥゥオオオオオオッ」


 深夜に鳴り響くその一声は、凶暴な魔獣の咆哮そのものであった。低く咆えるような声は、街中に轟き渡り、恐怖と破壊の気配を孕んでいた。まるで地獄から湧き上がる悪夢のような叫び声であり、その音波は人々の心を震わせ、魂を凍りつかせるかのような影響を与えた。


 人々は逃げ惑うが、アシュゴロスの巨体は街を蹂躙していく。古い石造りの建物は一瞬で崩壊し、街路は亀裂が入り、瓦礫と埃が舞い上がった。


 城の近くにある教会の尖塔はアシュゴロスの力強い一撃で崩れ落ち、教会内の祭壇は粉々に砕かれた。彫刻された美しい壁画も無残にも破壊され、信仰心に寄り添ってきたものたちは失望に包まれた。


 街の広場には緑の草地が広がっていたが、アシュゴロスの蹄がその美しい景色を踏みにじった。草花は押し潰され、土壌は血の匂いに染まった。

 かつて美しい庭園だった場所は、今では廃墟と化していた。


 人々の住まう家々も例外ではなかった。アシュゴロスの巨大な手が屋根を引き裂き、家族の宝物や思い出の品々は地に散らばった。

 一軒一軒がその壊滅的な力に押し潰されていく様子は、生活の基盤が一瞬で奪われるという絶望感をもたらした。


 この恐ろしい災厄の中、人々は全力で逃げ惑い、助けを求めた。しかし、アシュゴロスの存在はあまりにも強大で、人々の命を脅かし続けた。


 アシュゴロスが凶暴な咆哮を上げながら暴れ狂っている中、町には子供たちの叫び声が響き渡る。彼らは恐怖に震えながら逃げ惑っていた。子供たちの叫び声は、絶望と恐怖が入り混じったものだった。



「たすけてぇ!!」


「こわいよぉ!!」



 その声には無力さと絶望感が滲み出ており、アシュゴロスの脅威に対する恐怖が強く感じられた。


 一人の子供が声を詰まらせながら叫んでいる。


「ママ!パパ!たすけて!」


その悲痛な叫びは、周囲の人々にも絶望感を与えた。


 子供たちの叫び声が町中に響き渡る。まるで絶望の歌のように。


 王国近衛騎士の一人がその光景を目にし、勇敢に立ち向かう。


「子供たちを逃がせ!」


彼は叫びながら剣を手にする。彼の目には決意と覚悟が宿っており、彼は一心不乱にアシュゴロスへと向かっていく。


「みんな、逃げてくれ!」


 子供たちに呼びかける別の近衛騎士の声が風に乗って響く。彼らは自らの身を挺して子供たちを守っている。

 アシュゴロスの攻撃を受け止めるたびに近衛騎士が一人また一人倒れていく。しかし、彼らは決して退かずに戦い続ける。


 子ども達はどこにも身を隠す場所がないことを悟り、近衛騎士の庇護の下に身を寄せている。


「ここにいてくれ。俺が守るから」


 近衛騎士は子供たちを安心させるように囁く。

彼の姿は壮絶な戦闘の中でも闘志に満ち、決して絶望を抱かずにいた。


 アシュゴロスの咆哮と近衛騎士達の剣の音が交錯する中、彼らは必死に子供たちを守りながら戦っている。


ただ、この絶望の中で、希望の光が見えることはなかった。

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