三、「遠」足じゃありませんでした。

 なんでこうなった……。

 約一時間後私はどんよりとした気持ちになった。

 行き先が変更。

 それも予定していた市外の海から学校の裏山へ。

 今日は風が強くて海の波が高くなって危ないからだそうだ。 

 だとしても。


「どうしてこんな日に……!」


 私たちに課せられたのは裏山のオリエンテーションと名づけられた、いわばお掃除大作戦のようなもの。

 山の落ち葉や薪木になりそうな枝を拾いながら山頂を目指しましょうということらしい。

 山頂についたら焼き芋を作る。

 ちなみにボーナスとして山で食べられそうなものがあったらそれも調理して食べていいそうだ。


「今日というこの日のためにせっかくお弁当を持ってきたのに」


 それも無駄になってしまった。

 いや、無駄にはしません。

 食べるけど。


「豊田さんそろそろ行くよ」


 班長と班のメンバーがぞろぞろ並んで歩いて行く。


「あっ、今行きまーす」



「じゃ、私たちこっちに見に行くからあとのみんなも自由行動で」


 班長は仲の良い女の子二人連れでそう言うと、さっさと登っていこうとした。


「あの、ちょっと待って。みんなでいっせいに行動したほうがいいんじゃ」 

「そんなことしてたら他の班に取られちゃうよ」

「おっさきー」


 みんなは何人かずつチームを作っててんでバラバラの方向へ行ってしまった。


「ええ……」



 そして私はぼっちになってこのように山を登っているわけです。

 いや、わかっていたけどね。

 ペア決めのときはいつも一人あまるのが定番だし。


「さーて。では山で薪木拾いといきますか」


 別に慣れているからどうってことない。

 それより誰より多く、誰より早く山頂に辿りついてうまい飯を食ってやる。

 私は決意に燃えていた。

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