二、遠足に行きます。
途中、学校に行く道にあるお稲荷さんに手を合わせた。
いつもの習慣だ。
「よしっ」
今日は学校の遠足。
遠足って特別感があって好き。
だっていつも行っているところとは違う。
そんなところに行くというだけで心がうきうきしてしまう。
こころなしか早足で学校に向かっているとガサガサと草むらが揺れた。
「うわっ?!」
びっくりして飛び上がる。
驚いた勢いで尻もちをついてしまった。
なにかが草の間を駆け抜けていく。
黄金色のしっぽがちらりと見えたような。
猫?
いやあのしっぽのかたちは犬?
「でもこのあたりに野良犬なんて……」
「うーわまたやってるよ、豊田」
後ろから男子の声がして、ハッとしてしまう。
ヤバい。
私またやっちゃった。
「あー、例の不思議ちゃん?」
「私見ちゃったんです!ってやつ」
私は後ろを振り返る。
「うるさい!転んだだけだもん!なんでもないったらなんでもない!」
かー!と威嚇するとやべ逃げろ!とかなんとか言いながら男子が逃げて行った。
「まったくもう」
ため息をついて立ち上がろうとすると、前にすっと手を出された。
「大丈夫、つくし」
「あ、ありがとう瑞樹」
そう言って私は手を取る。
私よりかわいい顔がどこか困った顔をしていた。
うん、困っててもかわいい。
「ごめんね。助けられなくて」
「いいよ、瑞樹のせいじゃないし。気にしない」
笑って肩をたたくと、少し顔が明るくなった。
「学級委員の仕事があるから先行くね。遠足楽しみだね」
「うん、楽しみ!またあとでー」
私は手を振って瑞樹を見送る。
瑞樹はごく少ない私の友人の一人。
私の事情を知っていてもバカにしたりしない。
私はいわゆる「見えてしまう」人間だ。
子どものころから妖や幽霊を数多く見てきた。
昔はそれがこわかったり驚いたりでまわりに話していたらいつのまにか私の周りの人は遠のいていった。
まあそうだよね。
自分とは違うということを人はいやがるものだから。
ましてや見えないものをいるとかいう子なんて気味悪く思うかもしれない。
はあ、とため息をつく。
それからよっしと気をためた。
「学校行くぞー。遠足行くぞー」
楽しみ!
私は思わずスキップしながら学校へ行った。
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