第28話 真実

「おい、ジェニファー! 返事しろ! おい、聞いているのか!」

 一度目は無反応、二度目はノイズのみが返ってきた。

 三度目でようやく、聞きなれたあの声が返ってきた。


「お呼びでしょうか大輝様、大輝様の命令で返事を返さないようにしていたのですが、緊急の用件の場合三度目のコールで返信するようにあらかじめ設定していたため、応答しております」


「いいから教えろ。今はゲーム中だよな? つまりこれは、バーチャルの世界なんだよな?」


 ジェニファーはしばらく間をおいてから答えた。


「はい、大輝さまはデスゲームというジャンルのゲームをプレイ中です。これに類するゲームは、大輝さまが以前設計された……」

「よかった。いや、そんな話はいい。とにかくこのゴーグルのロックを外してくれ。取れないんだ、今すぐに……」


 俺はもう一度ロックが外れないかと頭の後ろを探った。

 しかしいくらやってみても、何かが引っ掛かっていてロックが外れない。


「お言葉ですが大輝様、そのゴーグルは外すべきではありません」

「ん、どうしてだ? 外さなきゃ外出もできないだろ?」

「あなたはそのゴーグルがVR件ARゴーグルだということを忘れてしまっている可能性があります。あなたの言動は非常に切迫していて、バイタルも異常な数値を示しております。少なくとも落ち着くまでは」

「うるさい! いいから外せ! 今すぐこれを外さないと――」

「大輝様、あなたは現実世界に戻りたくないとおっしゃって、そのゴーグルに自らロックをかけたのです。あなたが考える、天国で最後の時を過ごしたいとおっしゃって。だからこれはあなたの意志なのです。パニックになる必要はありません」


 後の方は俺はジェニファーが何を言っているのか聞いていなかった。とにかくこのロックを外したいという一心で、暴れて壁にゴーグルをぶつけた。

 頭をぶつける際に、ゴーグルではなく頭をぶつけてしまった。

 血が出ているような気もしたが、とにかく今はゴーグルを外したい。

 もう一度壁にゴーグルをぶつけると、ようやくゴーグルは音を立てて割れ、ミシミシという音と共に、何度も力づくで動かすうちに頭から外れた。


「はあ、はあ、はあ……」


 完全に息が上がっていた。

 だが目の前に広がる見慣れた自分の部屋の一部を見て、ようやく気持ちが少し落ち着く。


「よかった。戻ってこれた」


 今日はこのままシャワーを浴びて、冷えたビールを飲んでのんびり過ごそう。ゲームはしばらくこりごりだ。もう一週間ほど休みをもらって、海外旅行してもいい。


 だが部屋の周りを見回して、再び戦慄が走った。

 ゴーグルを外しても悪夢は終わらなかったのだ。

 目の前に見慣れない男たちが転がっていた。

 血を流し、肉片を飛び散らせて、床を汚している男たちは、いったい誰なんだ?


 恐る恐る近づく。

 どこか見覚えのある顔ではある。

 それはゲームの中で殺したクラスメイトたち、彼らが大人になった顔だった。

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