第27話 愛・強制

 俺が話している間にも、何か恐ろしいものを見るような目で俺を見つめていた優菜は、徐々に後ずさりし、俺から離れていった。


 俺は逃げようとする彼女の腕を乱暴に引っ張った。

 今彼女を離せば、一生彼女と会えなくなると思った。

 そうだ。俺が撮影したのではないと、疑いを晴らすまでは絶対に彼女を離しちゃだめだ。


 俺は助けを求めて手を伸ばす彼女の上にのしかかって、こちらを向かせ、必死に訴えた。


「俺じゃない! 俺はやってない!」

「イヤ! ヤメて!」

「なんで分かってくれないんだ! 俺じゃないって言ってるだろ?」


 イヤだなんて言葉を彼女の口から聞きたくない。

 嫌がる彼女を抱きしめた。

「俺は味方だ。今までだって、何度もキミを助けただろう。あいつらから。キミを押し倒して乱暴しようとした奴らから!」


 必死に彼女をつかまえようとしたからだろうか。

 彼女のブラウスのボタンがはじけ飛び、半分ずれたブラから乳房があらわになった。

 そこから流れる血を見て、俺は奴らへの怒りを新たにする。

「ほら、奴らがキミを傷つけた。傷つけたから、キミは血を流しているんだろう?」

「ちょっと! ヤメて! 痛いから!」

 気づくと俺は優菜のブラジャーを引っ張って、それを彼女の体から引きちぎっていた。

 そして乳房から流れる血を舐めとる。

「俺が、俺がちゃんとキズを癒してあげるから!」

 

 欲望が沸き上がるのを感じた。

 ずっとフタをして押さえつけていたけど、自分の中でずっと煮えたぎっていた思いだ。


 彼女を抱きしめたい。

 奉仕したい。

 必要なら命だってささげる。

 それが俺の願いだ。


 口に出して、そして心の中でも同時に同じ言葉を何度も唱えた。


 彼女にその思いが伝わったのだろう。

 彼女は俺を受け入れてくれた。

 だらりと足の力を抜き、俺の下半身にゆっくりと太ももを預けて、すべてを受け入れる覚悟を決めてくれた。


「ああ、優菜! 優菜、優菜!」


 俺は夢中で彼女を愛した。

 血を流している乳房だけじゃない。

 汗をかいた脇も、汚れた膝も、泥の詰まった爪の間も。

 すべてを愛し続けた。

 彼女が俺のすることは少しも抵抗せずに受け止めてくれた。

 彼女が微笑んでくれるのが見える。

 俺は夢中だった。



 そして気づくと彼女が動かなくなっていた。

 彼女の温かさが失われ、呼吸さえ感じなくなる。


 俺は慌てた。

 彼女も俺が殺してしまったのか?


 俺はまぶたを強く閉じ、立ち上がって駆け出した。

「うわーーー!!」

 そのまま階段を駆け下りたが、階下まで降りたところで、勢い余って走り続け、何かにつまづいて転んだ。


 床に顔をぶつけ、目の前にノイズが走る。

 そこでよくやくこれがゲームだということを思い出した。


 だが頭を手で触り、ゴーグルを取ろうとするが、ロックがかかっていて外れない。

 悪夢から目が覚めない。

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