第3話 同窓会での再会

「実は知ってるんだあ。あなたの秘密」


 そのメールは突然来た。過去に使っていたメールアドレスを整理しようと思って開いたら、受信ボックスにある大量のスパムメールの一番上に優菜のメールが表示されたのだ。つまりたった今受け取ったということだ。


 まるでスパムメールのようなタイトルだが、俺が優菜のアドレスを見逃すはずがない。

 だが知ってるって、何を。

 まさか俺がコールガールを通して優菜に淫らなことをしてることがバレたのか?


 十数秒ためらってから、意を決してメールをクリックした。


 メールは同窓会の連絡だった。全体に送られたと思われる日時や場所を記載した内容のあと、優菜からの私信が添えてあった。


「今もこのアドレスが使われてるといいんだけど。私たちのクラスで一番の成功を収めたのが大輝くんだってこと、噂になっています。クラスの中村君がゲーム雑誌に載ってたあなたの写真を見せてくれたんです。思わず私も買っちゃった。両親にも見せて自慢したんだよ? 直接話が聞けるのを楽しみにしています」


 添付されたファイルには、クラスメイトほぼ全員の現在の連絡先が記載されていた。


「くそ、くそ!」


 嬉しさと恥ずかしさ、そして嫉妬が入り混じった感情で満たされた。

 雑誌の記事はゲーム製作者インタビューのやつだろう。それを見つけたのがクラスの中村だって? そいつとはいったいどういう関係なんだ。

 なにが直接話を聞きたいだ。それなら同窓会の時じゃなくて二人で会うって選択肢もあるだろう。

 中村には会ったのに、俺とは会えないってのか。


「直接話が聞けるのを楽しみにしています」


 いかにも社交辞令っぽい、一線を引いたような最後の一文。

 同窓会の開催を決めたクラスの連中と優菜にとって、俺は蚊帳の外なのだと思わずにはいられなかった。


 俺は嫉妬のあまり、クラスメイトの連絡先一覧をジェニファーに記憶させ、それを手がかりに奴らの情報をまとめさせた。だが優菜とクラスの男子との関係を示すやりとりは見つからなかった。


 真偽をたしかめるため、俺は同窓会に出席することにした。

 少なくとも、優菜がどんな女になったか、それだけでもこの目で確かめたい。

 社会で成功した今の俺なら、優菜と対等に話すことができるはずだ。


 ジャケットにジーンズ。胸ポケットは改造してあり、動画撮影用のカメラが仕込めるようになっている。以前ゲームイベントで講演したとき、客からのヤジが飛んで来たらそいつの顔を記録できるようにと作ったものだ。

 俺はカメラをセットして期待と不安の入り混じった気持ちのまま同窓会に出席した。



 だが日付が変わる直前に帰宅した俺は泥酔していた。

 フラフラと家具にぶつかりながらたどり着いたクローゼットから、引き出しの裏に隠していた錠剤を取り出して飲み込んだ。どんな効果がある奴だったか、すぐには思い出せなかった。


 帰宅を知ったジェニファーが話しかけてきたが、俺は不機嫌を訴えるばかりで意味のあることは何も言わなかった気がする。

 ただ、ジェニファーが気分をよくするためにゴーグルを装着するように言った気がしたので、俺は指示通りにしてベッドに飛び込み、そのまま寝てしまった。

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