5.協力、そして会議
死んだキャタピラーの上に立つ俺の前に、正座をする骸骨……もといスケルトン。
「……それで?黒谷さんじゃないのは分かりました。とりあえず敵じゃないのも分かりました。貴方の名前は?」
「はい。私、
人体模型には詳しくないから俺は骨格じゃ男か女か分からないが、この声からして女性……女の子だろう。
それにしても骸骨に転生ってどうなんだ?
「これはご丁寧にどうも。俺は
【名称を『クロウ』に決定しますか?】
ステータス画面が出てくる。
うわ!びっくりしたー!そう言えば名称未設定だったな。他に付けるとしても鳥の名前になりそうだし、身体も羽も基本黒寄りだしクロウでいいや。決定と。
……待てよ。邪神もしかして名前で俺の事鳥にした?
いや、まぁまだそうとは決まってないが、なんか釈然としないなぁ……。
「あ、あの、クロウさん?どうしたんですか?空中睨んだり首傾げたり……。」
おっといけない。今はリオとの話が先だな。
「あぁいや、失礼。少し考え事をしてました。ところでリオさんは何故、私に声をかけたんですか?」
「私、ここに送られる時に友達とくっついてたんですけど、転生したら近くに居なくて探してたんです。骨なので、こう、バラバラになって地面に横たわって動かなければ他の生き物は無視してくれるから楽なんですよ?」
そう言うとその場でカラカラと崩れ落ちる骸骨。何も知らずに見るとただの白骨死体だ。これだと犬くらいしか持っていかないだろうな。
「それで藪に隠れながら進んでたら、日本語で叫んでるのが聞こえてきたので隠れて見てたんです。戦ってる様でしたし。」
「なるほど。俺と状況は同じか……。俺も同僚探してるんですよ。てか、見てたなら手助けしてくれれば良かったのに。俺、攻撃力低くて物理はまともにダメージ入らないんですよ。」
「突然藪の中から骸骨出てきたら攻撃するでしょう?」
確かに。いきなり動く骸骨出てきたらとりあえず魔眼を飛ばすと思う。
「問題無さそうだったので戦闘が一段落してから、こうして声をかけさせて頂きました。話を聞かせてもらったところ、私の魔眼が使えそうですし。」
「お?と言うことは?」
「私は《灼熱の魔眼》を貰いました。そこの芋虫、もし食べるなら私の魔眼で焼きましょう!そしてよかったら私にも少し……。そもそもこの体で食べられるか試したいんです。何せ内臓がひとつも無いので!」
「ありがたい!一人でこの大きさを食べ切れる気しないし、食べれるだけ食べちゃいましょう!」
なんせこいつ翼を広げた俺と同じくらい大きいからな。
リオの大きさが150センチ前後だとして、俺の体長は45~50センチくらいか?翼を広げれば1メートル弱くらいはあるだろう。俺も産まれたてにしては十分大きいけどキャタピラーでっか!
そしてリオの《灼熱の魔眼》で芋虫を焼いてもらい、腹ごしらえをする。リオが魔眼を発動するのを見て気づいたが、魔眼発動時には目が光るみたいだ。リオは目が無いから右の眼窩が赤く光る。後ほど見てもらったら俺は灰色だってさ。
《灼熱の魔眼》は見た所に直接火を出すという訳ではなく、高熱を発生させた結果の発火だそうだ。低温調理も可能ってか。優秀。
芋虫の味?そうだなぁ……苦味のあるグラタン?表面は焼かれて香ばしくなってるし中はクリーミーだしで意外と食べられなくはないのが困る。見た目は酷いのに全然食料として見れちゃうからな。
余談だが、リオが食べた物は喉をすぎる辺りでどこかに消えた。味はしないらしい。骨だけなのに動き回れば無い腹が減り、走れば疲れるみたいだ。不思議な身体をしているな。
「さて、腹も膨れたところで、リオさんはこれからどうするんですか?友達が何に転生したのか知らないでしょう?」
「そうなんですよねぇ……。なので一緒に行動出来たらいいなって思って声かけました。協力、という形を取れればなと。ひとまず私の友達と、クロウさんの同僚の方を探すまで。それから先はその時になってから考えませんか?」
「そうですね、二人居れば警戒もしやすいし、俺は空から、リオさんは地上からと二つの視点で探せるのも良い。接敵しても逃げる時は俺の魔眼を使えば時間稼げますし。」
「では!」
「はい、よろしくお願いします。」
「ありがとうございます!これから暫くは一緒に居るんですし、口調崩しちゃって下さい。さっき昼飯にしてやるー!とか叫んでましたもんね。」
そう言ってクスクスと笑う。しまったあれ聞かれてたのか!テンション上がってる時だったからなぁ。恥ずかしいわ。
さっきから気になってるんだが、どうやって声出してるんだ?声帯無いじゃん。人体の神秘ってやつ?
「お、おう。それじゃあ改めてリオ、よろしく。早速だけど、作戦会議、やっちゃおうか。」
「作戦会議ですか?」
「そう。同行者が増えたと言う事は、それだけやれる事が増えたと言う事。お互い現状何が出来て何が出来ないのか、長所と短所を把握してから行動しよう。」
「分かりました。お互いのステータスを一緒に確認しましょう!」
「じゃあまずは俺のから見てみるか。リオのも見せてもらうな。」
「「《ステータス閲覧》」」
―――――――――――――――――――――――――――
名称:クロウ
種族:ベビーバード
Lv:3/5
HP:15/15
MP:20/20
SP:20/20
攻撃力:2
防御力:4
魔法力:7
抵抗力:6
素早さ:14
ランク:G
パッシブスキル
《飛行Lv1》《鷹の目Lv1》《言語理解Lv―》《闇属性耐性Lv1》《打撃耐性Lv1》
アクティブスキル
《影魔法Lv0》《重力の魔眼Lv1》《ステータス閲覧Lv1》
称号スキル
《邪神の子Lv―》《転生者Lv―》《チキンランナーLv1》《無鉄砲Lv1》《――――》
――――――――――――――――――――――――――
おお!ステータス高くなってるな!攻撃力は……上がらない、と。なんで2つもレベル上がって攻撃力は上がらないんだよ!あんなに鉤爪も嘴も使ったのに!
「あ!クロウさんクロウさん、これ、スキルとか種族とかに注目すると詳細出てきますよ。」
「なに!?でかした!これで少しでも情報が増えれば今後の作戦も立てやすくなる!」
とりあえず種族からだな!俺がなんの雛かだけでも分かれば嬉しい。
【《ベビーバード》:Gランク】
【あらゆる鳥類の雛、と言われているほど進化先は多岐に渡る。】
【成長すると危険であるため、見かけたらすぐに狩れ。というのが冒険者間の常識である。】
【産まれたてのその身は柔らかく美味であり、焼き、蒸し、揚げ、どう調理しても絶品。愛好家も多い。その羽を加工した装飾品は人気で、錬金術の触媒としても優れている。】
俺めっちゃ人間から狙われるじゃん森から出れねえよ。
切ない。これは切ない。後半食レポとむしった羽の使い道じゃねえか!
進化先が多そうなのは良かったが、それ以上に気をつけないとモンスターからも人間からも狙われる。
気になるスキルとか称号も見ていくか。
【アクティブスキル:《影魔法》自身の影、他者の影を操る魔法。】
【アクティブスキル:《重力の魔眼》自身、又は視界内の指定した範囲に指定した方向への力を加える。範囲、加える力に応じてMPの消費が変わる。】
影魔法は説明シンプルすぎない?要検証だな。まだ使えないし。
魔眼はこれありか?《重力の魔眼》なんて言う名前だから下方向だけかと思ってたが
【称号スキル:《邪神の子》邪なる神に見初められた存在への祝福。戦闘後の獲得経験値にボーナスが付く。進化先にも大きく影響する。】
【称号スキル:《転生者》異なる世界からエリュシオンへ渡ってきた者の証明。スキル、称号獲得の条件が緩和される。】
【称号スキル:《チキンランナー》臆病者へ贈る憐憫の称号。逃走の際のSP消費が軽減され、進化先にも影響する。そら逃げろ。やれ逃げろ。あの地の果てまで。】
【称号スキル:《無鉄砲》己の身を省みず敵に突撃する決死の証。反動ダメージを軽減し、自傷攻撃の威力が上がる。】
称号スキルは今の所メリットしかないな。そして空欄は見れない、と。進化先に影響ってのはどの程度テコ入れしてくるのか分からんし放置。《チキンランナー》もフレーバーテキストに目をつむればSP消費少なくなる当たりだし、うん。
臆病者って称号に煽られるとは思わなかったよ。追いかけられたら逃げるだろ普通!お兄さんポカポカしてきちゃった。
「クロウさんって美味しいんですね。」
「……食うなよ?」
「やだなぁ、食べませんよ。私味わかんないですもん。それよりも私錬金魔法の素質があるので、羽とか欲しいなぁ……って」
「……むしるなよ!?」
寝てる間に調理前の七面鳥みたいになるのは御免だぞ。
「リ、リオのステータスも見ようか、錬金魔法の素質があるんだろ?」
―――――――――――――――――――――――――――
名称:リオ
種族:
Lv:1/5
HP:15/15
MP:10/10
SP:15/15
攻撃力:6
防御力:5
魔法力:3
抵抗力:6
素早さ:5
ランク:G
パッシブスキル
《夜目Lv1》《言語理解Lv―》《光属性脆弱Lv10》《打撃脆弱Lv10》《状態異常無効Lv―》
アクティブスキル
《錬金魔法Lv0》《灼熱の魔眼Lv1》《ステータス閲覧Lv1》《擬態Lv1》
称号スキル
《邪神の子Lv―》《転生者Lv―》《ただの屍Lv1》《――――》
――――――――――――――――――――――――――
【《
【魔素溜まりに引き寄せられた魂に魔素が寄り集まり形を成したモンスター。】
【骨は魔素の塊なので、魂の宿る頭蓋骨を割られなければ体の骨は破損してもMPを消費すれば治る。】
【適正な処理をした骨粉は肥料や錬金術の触媒になる。】
「なんて言うか、ステータス自体はバランス良さげだけどスキルがピーキーだな。状態異常が無効なのは心強いけど打撃と光属性脆弱って中々痛い。特に打撃がなぁ……。」
「そうなんですよね、でも、MP消費で骨が治せるなら私の骨を武器にできますね!同じようにMPを使って骨の強度上げれるか試してみます!尺骨、大腿骨辺りとかどうかなぁ……」
そう言って地面に座り、自分の体から大腿骨を外し手に取りうんうんと唸るリオ。すると無くなったスペースに塵が集まるようにして骨が形成されていく。
「じゃーん!どうですか!これで元通りです!武器も手に入りました!外した骨も強度上げれましたし、錬金魔法が使えるようになればもっと色々出来るんじゃないですかね?」
カタカタと笑うリオ。怖いよ、君。頭蓋骨以外は替えがきくとしても嬉々として自分の体で実験するなよ。
「オーケー、実質無制限に武器を生み出せるのが分かっただけでも上々だ。スキルや称号も見ていこう。」
【アクティブスキル:《錬金魔法》物質を分解、構築、分離、合成し、様々な物を作る魔法。】
【アクティブスキル:《灼熱の魔眼》視界内の指定した範囲に熱を発生させる魔眼。範囲、与える熱量によってMPの消費が変わる。】
【アクティブスキル:《擬態》死体に見せかけ、自分の存在を隠蔽する。動くと解除される。】
【称号スキル:《ただの屍》死体になりすまし敵を欺き、やり過ごしたものの証。隠密が察知されづらくなる。……返事がない。ただの屍のようだ。】
「リオも空欄の称号あるんだな。」
「クロウさんにあった詳細見れない称号ですよね?《擬態》と《ただの屍》はこそこそ移動してる時にモンスターやり過ごしてたら貰いましたけど、空欄は元から何も書いて無いですね。」
「なるほどな。今後も地上で探してもらう事になるから、適宜死体の振りしてやり過ごしてくれ。《灼熱の魔眼》はさっき言ってた通りだな。範囲、温度の調節が出来ると。MPが少ないから、やりくりが大変だろうけど切り札にはなる。キャタピラーは《火属性脆弱Lv10》だから、絡まれたら下手に殴るより魔眼で焼いちゃってもいいな。」
「はい!こんがりウェルダンにしてあげちゃいます!私の魔眼が火を吹きますよ!Lvも上げたいですし、クロウさん引っ張ってきてくれてもいいんですよ?」
「勘弁してくれ、やるとしても合流してからにしようぜ?あれ糸に捕まると抜け出すの大変なんだから。ところで、リオの探し人ってなんて名前なんだ?俺が探しているのは
「私が探しているのは
俺も別に好戦的じゃないけどね?襲われて仕方なくだからね?
「にしても、邪神の言う
「分かりました。私なんて骨だけだからまずは心臓を手に入れないとですもんね!亜人も何も、アンデットですし。形だけは人なんですけどねぇ。」
「そうだよ。骨をどうやって育てるんだよ牛乳でも飲むか?どう見ても成長期終わってんだろ。人生終わってんだから。」
「そ、そこはほら、進化先に
「いや、それ本格的に実体無くなるじゃん……。」
捜索を再開し、パタパタと空を飛ぶ。
人探しも大変そうだけど、亜人への道も模索していかなきゃいけない。中々ハードだなぁ……。
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