こがらしからし

 突然強く吹き荒んだ冷たい風に、ブルッと身震いしてしまう。

 周囲にあった枯葉は舞い上がり、宙を駆け回る。草木は音を立て、自分と同じように身を震わせている。

 肩をさすりながら立ち止まっていると、目の前に妙な生き物が現れた。

 目測で30センチほどの大きさ。

 体毛は生えておらず、二本足でしっかり地面を踏んでいる。一筆書きでかけそうな顔に、だらんと地面まで垂れ下がったオーバーオールに似た服。

 樹木のような皮膚を纏うそれを、小人とでも表現すればいいだろうか。

 そんな得体の知れない生物が予兆もなく現れたというのに、不思議と恐怖は感じなかった。むしろ、どこか懐かしさに似た感情が湧いてくる。

 しばらく観察していると、その生物は両手を大きく上にあげ、


「あい!」


 と威勢良く叫んだ。

 すると吹いていた風や音がぴたりと止み、舞っていた葉は一斉に地面へと落下した。

 さらに少ししてもう一度、


「あい!」


 と叫んだかと思うと、今度は忽然とその姿を消してしまった。

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