ノイズ
私には、人にない特殊な力がある。小さい頃はこの現象をよく理解出来ておらず、物心ついてからこんなことを宣えば気味悪がられることは分かっていたので、今まで誰にも喋ったことはない。もちろん、親にすら。
特殊な力というのは、ノイズが見えることだ。
私の視界では時折、物や場所にノイズが走る。そしてそのノイズが見えたところには、必ず不運が訪れた。
例えば冷蔵庫やエアコンなど電化製品に見えれば壊れ、給食の牛乳にノイズが走っていた時は集団食中毒が起きた。更に規模が大きいところでいえば、交差点。登校中にノイズを見た交差点では、その後必ず事故が発生した。公園の遊具に見えた時など、メンテナンス不足による転落事故で子供が重体となりニュースに載ったほどだ。
ようするに、ノイズが発生する物や場所に関わりさえしなければ、私自身の安全はいつだって確保されていた。危険が視認出来るのだから、それらを回避する自信があって当たり前だ。
この能力を存分に発揮し、ある時は大きな危険を回避した。またある時は未然に危険を防ぎ、ヒーローのように称えられる自分に酔った。
この力は明かさない方が有益だ。周囲の目を気にしただけでなく、そう思った事も否定しない。
ではなぜ、今になってこの話をしたのか。
簡単だ。その愚にも付かない自信が粉々にされたから。見えていようが回避不可能な状況はあるということ。
現に、今がまさにその状況。今まで物や場所にしか見えたことが無かっただけ。
鏡の中の私に、ひしゃげて見えるほど大量のノイズが走っている。
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