第13話 協力者の力があれば情報を得るのは容易い
目の前に見える女子高は被害者霊一号が通っていた学校であり、作品被害者候補達、行方不明事件の最初の場所。
ここで欲しい情報は被害者達の学校での生活や友好関係などなど、とにかく性格などがわかる情報が欲しい。
霊は記憶をいじられているために、犯人に繋がる記憶が欠如している。
被害者達の共通点を見つけられたら、犯人特定に繋がる事が可能だ。
そしてその為に今日は協力者を用意した。
それがこちら。
「やっと来たか」
「フード被ってたら警察に捕まるところでした。今日はありがとう。雪姫姉さん」
結崎雪姫、幼い頃、組織でお世話になっていた時に積極的にわたしをお世話してくれた、姉的存在。
本人の希望もあり、『雪姫姉さん』とお呼びさせてもらっている。
「それじゃ、行くよ」
校門を堂々と潜り、受付で校長を呼び出す。
彼女が警察手帳を取り出せば、簡単にアポは取れる。
「きちんと詳細は前日に伝えてるからね?」
だそうだ。
『にしてもこれ、職権乱用にならんのか?』
大丈夫だと思うよ。
あくまで事件を調べるための事情聴取的な感じだしね。
応接間に通された。
「えっと、そちらの方は⋯⋯」
「あーこの子はウチの召喚獣的なアレです」
「なるほど」
納得されたけどまぁ良いだろう。
雪姫姉さんのダンケンでの同僚で召喚獣を使役できているのって、桜って人だった気がする。
「それで、今日はどう言ったご要件で」
「ええ。今こっちではとある事件を追ってまして⋯⋯ニュースにもなっておりますので、ご存知だとは思いますが⋯⋯それが過去の行方不明事件と関係があると判断されました。よって、再び情報収集と言う訳です。三年前にはなりますが、少しでも覚えている事はありませんか?」
雪姫姉さんがこうやってまともに仕事をしている所を見ると、流石に息が詰まる。
普段のダラダラした感じとは違い、やる時はやる女なのだ。
その時のギャップがあるせいで、すごくカッコよく見える。
「そうですね。何分だいぶ前の話⋯⋯未だに事件の恐怖は覚えてますけどね。それに私自身、生徒達と関わりが薄いモノで⋯⋯」
それは仕方ない。
校門で挨拶されても、その人が校長なんてわからない⋯⋯そんなのはざらにあるんだから。
未だにわたしは校長の顔を覚えてない。
「それでは、当時の教師達やその後の行き先などを教えていただけませんか?」
「もちろんです。それにはデータがありますので⋯⋯少しお待ちください」
一応被害者霊も連れてきているけど、応接室に興味津々と言った様子だ。
⋯⋯そう言えば、このまま蘇生しても三年分の知識や経験がロスしているんだよね。
地黒さんに頼んで、その辺の解決はしておくべきか。
「ありましたありました」
持って来てくれたデータを確認する。
風音先生と七義先生の名前を確認する。
「行方不明となった生徒の友好関係などを知るような人物に心当たりはありませんか?」
「それはなんとも⋯⋯あーでも、一人だけ知っていそうな人なら」
誰だろ?
目新しい情報はあまり得られなかった。
流石に三年も経過しているから仕方ない。
当時の担任でも居れば、友好関係とかもわかったかもしれないのに。
そこから被害者の性格やらなんやらを割り出せた。
「死神ちゃんが過去の映像を出せる、魔法が使えたらな〜」
『無茶言わんでくれ。我にできるのは死の概念に直結するモノだけじゃ』
「知ってる知ってる」
冗談だよ。
真に受けるって、可愛いとこあんじゃん。
「とりあえず、今から校長に言われた人物に会いに行く⋯⋯で、良いんだよね?」
「はい。雪姫姉さん。死神探偵って女子の間では流行ってないんですか?」
「結構男性や冒険者人気が高いよ。女子高生が注目しているのは、イケメンアイドルやらメイクやら、男くらいでしょ」
「そうなんですね」
生徒達とすれ違っても、誰もわたしの存在に気づいてくれなかった。
『群がっても、お主が対処できんじゃろ』
いやね?
そこは「すみません。今は事件を追っているので」的な感じをね?
『え、いや。ちょ、えと、⋯⋯ってなるのがオチだ。雪姫嬢ちゃんに助けられて終わり』
死神ちゃんが冷たい。
「あ、この道は右から行きますね」
「なんで? 直行の方が良くない?」
「いえ。この道、被害者霊の通学路なんですよ。道に居る霊に話を聞いたら、当時の何ながわかるかもしれないです」
「なるほど。当時、どこをどんな風に帰ったかはこっちでも調べられてないね」
だろうね。
わたしの憶測だけど、多分誘拐された時間は学校に居る。
学校内で犯行が行われたから、どこをどう帰ったかは情報が出ていない。
そして幻術系の魔法を使って、それに誰も疑問を持ってない。
あくまで憶測であり、それを裏付ける為に情報が欲しい。
「そういや、今回は死神教団と関わりがあるんだっけ?」
「はい。作品と霊をセットにして完璧な作品にしている。丁寧と言うか器用と言うか⋯⋯まぁなんでも、霊に干渉しているので奴らと関係あるのは確かです」
あいつらは死神ちゃんと近い力が使えるからね。
ま、オリジナルと思われる死神ちゃんよりも劣るけどさ。
「あ、あそこの横断歩道に立っている幽霊が居ますね。聞いてきます」
あの霊魂の輝き的に、六年はあそこに定着している。
骨が折れた悲惨な見た目から、事故で死んだ地縛霊だろう。
最近事故で死んだ霊を見た事あるので、何となくすぐにわかった。
「すみません。少し良いですか?」
『え、オイラの事視えるんか?』
「バッチリです。三年前について聞きたい事があります。⋯⋯こちらの霊の顔にご存知ありませんか?」
ジロジロと見る。
この霊中身おっさんだな。
『あー、見た目良かったから覚えてるよ』
『⋯⋯』
あ、被害者霊さん逃げた。
『いっつも下向いてさぁ、もっとピシッと立てばモデルだったのによぉって毎日、行きと帰りに思ってたわ』
すごく興味もないし要らない情報⋯⋯ではないな。
しっかりと覚えているようだし、行きと帰りもちゃんと居ると。
「友達と帰っていたり、なにか違和感があった事はありませんか?」
『友達⋯⋯らしい奴は見た事ねぇな。金髪女共に絡まれていた姿は見た事あるけどよぉ。ちょっと脅かしたら、蜘蛛の子を散らすように逃げて、腹抱えて笑ったわ!』
なにしてんのよ。
⋯⋯力が使える程には成長しているし、地縛霊なのに別に縛られていなかった。
『んだけどよぉ。いつしかの帰りから見なくなったんだわ。その頃だったかなぁ電気屋のテレビでニュース観てよ、行方不明って。まさか死んでるとわぁな』
『コヤツ、幽霊ライフを謳歌しておるのじゃ』
まぁ、なんの縛りもないからね。
物に干渉できるようになると、本当にやりたい放題だ。
「帰りから居なくなった⋯⋯学校での犯行が真実味を帯びてきてしまった。⋯⋯情報ありがとうございます」
『ええよええよ。生きた人間と会話するのなんて久しぶりやしなぁ。それに⋯⋯中々のべっぴんさんやし』
『悪善! 我に任せろ! コヤツ塵も残さず切り刻んでやるのじゃ!』
やめい。
「あんまり悪いさはしていけませんよ。悪い事が積み重なると、悪霊になる可能性がありますから。⋯⋯あと、霊媒師に退治されるかも」
『そんなもん、漫画の中だけの話やろ!』
いやいや。
神社とかに行けば、結構本格的な人いますからね?
とりあえず忠告したので、雪姫姉さんのところに戻る。
「ウチには視えんけどさ、霊相手だと普通に話すよな」
「ん? わたしは生きている人間相手でも普通に話せますよ? 親友も友達も居るんですから」
「へぇ〜それは意外だ。良かったな」
「はい!」
『⋯⋯』
なんだよ、死神ちゃん。そのビミョーな顔は。
そんでまぁ、目的の人物が居るアパートに到着した。
「盗撮盗聴で一度警察に捕まった事のあるバカ、か。女子生徒について調べていたらしいから、何かしら知っているかもしれない⋯⋯」
「学校の治安を悪くした存在は校長の腹を痛くしそうですね」
「そうだね。そんじゃ、事情聴取と洒落こみますか」
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